2009年度事業計画
Ⅰ.月刊誌『地域開発』の発行
 機関誌月刊『地域開発』は、1964年10月の創刊以来継続して発行している。2009年4月で通巻535号となる。また2000年度に設置した編集委員会は10年目を迎え、幅広く充実した質の高い情報を、より広く提供するため、一層の内容充実に努める。
  いわゆる平成の合併によりこの10年間で3440余あった全国市町村数は本年1月には1700余となった。地域は生き残るために地域資源を見直し、人材を育成し、地域間連携による活性化をはかる。人口減少の中で、都市部にも限界コミュニティが見られる時代に国土計画の分野では国土形成計画が固まったことにより地域再生への取り組みが本格化する。温室効果ガス削減中期計画作成と相まって環境問題にもより焦点が当たるであろう。こういった今日的な課題に着目しながら、国土計画・広域行政論、地域振興・地域間格差・環境・景観問題、PPP、韓国・中国など近隣諸国の動向紹介などについて、多角的な視点からの企画編集をしていく。
 ●『地域開発』編集方針
1)内容
地域振興に関連するテーマをもとに特集を組み、地域の自立と連携を促進する。また、広く内外在住の研究者、実務家に寄稿依頼するとともに、問題を深化するため、独自の調査研究を行う 。
2)編集方法 編集委員会において、上記に関する議論を行い、担当編集委員のもとで、企画を進める。
3)対象読者 地域経済人、地方自治体職員、市民団体、地域問題政策担当者・研究者・実務家など。

●編集委員会の方針
  地域の自立と連携を支援する『地域開発』
●編集委員会
  委員長 (編集長) 大西 隆 (東京大学大学院教授、 当センター理事長)
委 員 関 満博 (一橋大学大学院教授、当センター理事)
委 員 矢作 弘 (大阪市立大学大学院教授、当センター理事)
委 員 根本祐二 (東洋大学大学院教授)
委 員 大西達也 (日本政策投資銀行地域振興部課長)

Ⅱ.「地域開発研究懇談会」の開催
 地域開発についての会員形式セミナーである「地域開発研究懇談会」は、2008年度末で通算開催435回を数える。
 2009年度においても、原則として年10回開催し、都市・地域に関わる一層幅広い分野からテーマや講師を選び、会員等に対し時宜を得た、有意義な情報を提供していくように努めることとする。
 このため、センター評議員・理事の方々の特段のご協力を仰ぐと共に、企画・運営の一層の充実を図っていくこととする。
 また、賛助会員の方々を対象とした「地域政策講演会」も、タイムリーな現地見学を取り入れるなど、工夫を凝らして実施していくこととする。

Ⅲ.調 査・ 研 究
 当センターの調査・研究は、自主・受託業務を中心に、次のように推進する。
 1. 自主研究事業
1)2030年の東京都心市街地像研究会
   都市再生緊急整備地域の制度の経緯と充実を念頭におきつつ、政府が提唱する、低炭素化の中期目標年次2030年における東京都心部の将来像を作成する。
 将来像作成のねらいは、低炭素化、国際経済化、都市美化、高質な居住と文化、そして安心と安全の5点である。
 検討対象とする地域は概ね皇居を中心とし、東から隅田川、総武線・中央線そして南に向かって外苑東通りから田町駅にいたる輪郭線の内部と新宿駅周辺(副都心地区を含む)とする。
 具体的には、2008年10月、当センター内に賛助会員などの参加企業による「2030年の東京都心市街地像研究会」を設置し、研究を進めており、本市街地像の作成結果については、政府、地方自治体および企業群に対し、政策・制度の創設・改善、新しい企業活動の新分野を提起していくこととする
2)ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック表彰制度
   当センターの自主研究として実施してきた「環境と暮らしにやさしい住まいとまちづくり検討委員会」の成果を踏まえて、建物躯体とエネルギー設備機器をセットとして捉え、トータルとして省エネルギー性能の高い優秀な住宅を選定する「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック」表彰制度を2007年度に創設し、昨年度は多数の住宅メーカーから応募をいただいたところである。
  本年度においても、本制度の主催・運営を通じ、住宅の省エネルギー、CO2排出等の削減推進を支援する。特に本制度の各地域への普及促進をはかり、地域における住宅の省エネルギー促進への貢献を目指す。
3)CSRによる企業と農山漁村のパートナーシップと地域活性化の可能性
   人口減少時代に入り、国土の維持にはこれまで以上に創意工夫が必要となる。特に農山漁村地域は、自然環境の保全および都市災害の防止や、食料生産の場としても重要であり、過度な衰退は避けるべきである。
  民間企業には、自由な経済活動が認められる一方で、社会への責任を果たす義務も背負っている(社会的責任、CSR)。
  本研究では、このCSR活動として、国土保全に寄与する農山漁村地域への支援の可能性を探り、企業と地域の共栄を推進したい。さらに、企業と地域のパートナーシップから生み出されたアイデアを商品化あるいはサービス化を図るきっかけの場となることを目指す。
  具体的には、センター関係者(研究者、実践家、企業実務者等)に呼びかけ、定期的な研究会を開催する。実験的に取り組めそうな企業と地域においてモデル的に実施したうえで、展開方策を整理し、賛助会員企業等へ提案する。

 2.受託予定調査事業業務
1)地域振興アドバイザー派遣・事業評価調査
    本事業は、地域振興に関する多様な地域の要望に対して、地域づくりの専門家を派遣し(約20地域に3名のアドバイザーを年3回派遣)、地域課題の検討を 支援する事業の成果、効果を評価する調査である。 1988年にスタートして21年が経過したが、その必要性は変わっていないが、事業評価を実施し、あらためて存在意義を明確にする。
2)地方拠点都市地域整備支援事業
    1992年に地方拠点法が施行され、そのフォローとして各拠点都市地域が策定した基本計画に基づく整備に関する支援を実施してきている。昨年度までは、国土交通省と全国地方拠点都市地域整備推進協議会からの受託であったが、国の調査は終了し、本年度は全国協議会からの受託のみで、ニーズの高い地域への支援や研修を行う。
3)ベトナム国都市計画策定・管理能力向上プロジェクトへの参加
    経済発展の著しいベトナムでは、都市の開発や拡大が進行しており、日本の 科学的な調査に基づいた計画の策定を可能とする人材育成が急務となっている。JICAでは、(株)アルメックに、ベトナムにふさわしい都市計画教科書の作成(事前調査、作成、試行、改定、モデル実施等)が依頼された。それに、当センターも一部関与することとなった。 併せてベトナムの地域開発に貢献すべく、CDM事業化支援を各地で実施する。
4)既成市街地再開発調査
    都市再生機構と東京電力(株)から成る「既成市街地と都市基盤整備に関する研究会」を組織し、都市機能の向上とよりよい住宅の供給に資することを目的として、土地の高度利用とエネルギーの有効活用のあり方について検討する。
  本年度は、持続可能・循環型社会の実現に向けて、街づくりにおいては、地球温暖化対策やヒートアイランド対策が喫緊の課題とされており、省エネルギー、環境共生への取り組みが重要となっていることから、都市機能の向上とよりよい居住環境形成に資するべく、地球環境に配慮した都市基盤整備、エネルギー利用のあり方について検討を行う 。
5)外苑東通り研究会
    本調査は、都市再生緊急整備地域内の未整備な主要幹線道路において、主要幹線に相応しい街路整備を進めるための沿道市街地整備のあり方や課題について、昨年度までの成果に関する深堀り検討・研究を継続的に行うことを目的とする。
  具体的には、緊急整備地域「環状二号線新橋周辺、赤坂・六本木地域」の市街地整備において“軸”となりうる「外苑東通り沿道地域」を対象としつつ、当該沿道空間に関するあり方および実現方策の調査・研究を行うものである。
  昨年度は、外苑東通りとその周辺エリアにおける歩行者環境の高質化、歩行者回遊ネットワークの形成等について、地元組織等を啓蒙しながら検討を進め、将来的展開策を検討したが、本年度も引き続き将来的展開策について提案し、また、都市計画道路としての未整備状況については、あらためて関係機関に働きかけを行う。
6)景観まちづくりに関する意見交換会
    電気事業者は、「良好な景観の形成」に資する設備形成に積極的に寄与するよう努めたいとの意向を有しており、かつ、それを実現できる力のある企業である。その際に、供給義務や料金負担の公平性など公益事業である電気事業の特性を考慮し、現実的な事業運営に大きな混乱が生じないように配慮することが一方において重要な課題となっている。ついては、幅広い専門的な知識と高い見識を有し社会的に大きな影響力を持つオピニオンリーダーの先生方と電気事業者幹部が、景観問題に関する自由で忌憚のない意見交換を通じて理解と認識を更に深め、良好な景観づくりに一層貢献する設備形成を推進していくことを目的とする。
7)真庭バイオマスタウン計画の展開
    昨年度は、真庭バイオマスタウン計画の見直しを行った。本年度は、それを踏まえて、事業を推進する。
8)活力と癒しを活かした都市農村交流事業の展開
    現代都市の企業人・住民を対象に、農村でのリフレッシュ事業を、当センターの地方とのストックを生かし、うまく交流を実施する。
 農村での癒し、都市の魅力を生かして、双方の活性化につながるしくみや事業を受託し、展開する。
9)低炭素社会実現に向けた都市と農村の連携
    低炭素社会の実現は、まったなしである。都市の活力を生かして、農山村の 維持や活性化のために、国内CDMを活用したプログラムを作成し、都市と農村の連携を図る事業を受託・展開する。

 3.そ の 他
1.公益法人制度改革への対応
    従来の公益法人制度は2006年6月に公布された「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(いわゆる「公益法人制度改革3法」)により大幅に変革された。
  公益法人制度改革3法は2008年12月に施行され、同時に当センターは法律上「特例民法法人」となった。引続き制度改革への対応を図るため、移行のために 必要な条件整備を行い、組織の在り方や研究態勢を早急に検討していくこととする。
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