2011年度事業計画
Ⅰ.月刊誌『地域開発』の発行
 機関誌月刊『地域開発』は、1964年10月の創刊以来継続して発行しており、2011年3月号で通巻558号となった。編集委員会としては、幅広く充実した質の高い情報をより広く提供するため、さらなる内容充実に努める。
  東北地方太平洋沖地震の想定を超える甚大な被害に対し、被災地域においての復興計画はもとより、全国の都市・地域における防災対策やエネルギー政策の見直しの必要性も出てくる。災害に強いまちづくりをいかに進めるか。低炭素都市への取り組みも含め今後の国土計画・都市計画はどのように進められるべきか。また東北新幹線の青森延伸、九州新幹線の鹿児島ルート全線開通、東京スカイツリー開業などによって、どのような新たな動きが生み出されるのか。
  地域の新たなニーズを捉え、広域行政、防災都市、地域間格差是正、地域産業振興、環境問題、公民連携、諸外国の動向紹介等、多角的な視点からの企画編集をしていく。
 ●『地域開発』編集方針
1)内容
地域振興に関連するテーマをもとに特集を組み、地域の自立と連携を促進する。 また、広く内外在住の研究者、実務家に寄稿依頼するとともに、問題を深化するため、独自の調査研究を行う。
2)編集方法 編集委員会において、上記に関する議論を行い、担当編集委員のもとで企画を進める。
3)対象読者 地域経済人、地方自治体職員、市民団体、地域問題政策担当者・研究者・実務家など。

●編集委員会の方針
  地域の自立と連携を支援する『地域開発』
●編集委員会
  委員長 (編集長) 大西 隆 (東京大学大学院教授、 当センター理事長)
委 員 関 満博 (一橋大学大学院教授、当センター理事)
委 員 矢作 弘 (大阪市立大学大学院教授、当センター理事)
委 員 大西達也 (株式会社日本政策投資銀行地域企画部参事役)

Ⅱ.「地域開発研究懇談会」の開催
 地域開発についての会員形式セミナーである「地域開発研究懇談会」は、2010年度末で通算開催454回を数えた。
  2011年度においても、原則として年10回開催し、都市・地域に関わる一層幅広い分野からテーマや講師を選び、会員および一般の参加者に対し時宜を得た、有意義な情報を提供していくように努める。このため当センターとして企画・運営の一層の充実を図っていくこととする。 懇談会の内容としては、東北地方太平洋沖地震からの復興策などタイムリーなトピックをはじめとして、次のような領域で懇談会を実施したい。
 ・東北地方太平洋沖地震(防災都市づくり、エネルギーインフラ、産業復興)
 ・政治経済のトレンド(政権の行方、資源エネルギー問題)
 ・国土政策のトレンド(国土管理・海域の課題、地域主権、道州制問題)
 ・都市再開発(低炭素社会)
 ・地域経済振興(ものづくり、農業生産力拡大、観光、ブランド化等)
 ・地域社会のトレンド(新たな公、少子・高齢化、成熟社会)
 ・行政システム・財政に関すること(大都市制度、クラウド、税制他)
  また、賛助会員の方々を対象とした「地域政策講演会」も、ニーズの高いテーマに加えてタイムリーな現地見学を取り入れるなど、工夫を凝らして実施していくこととする。「地域開発研究懇談会」と共催の形で年2回実施することを計画する。
Ⅲ.調 査・ 研 究
 当センターの調査・研究は、自主・受託業務を中心に、次のように推進する。
 1. 自主研究事業
1)グランドデザイン2030
   2008年10月、当センター内に賛助会員などの参加企業による「2030年の東京都心市街地像研究会」を設置した。2009年5月、都心3区を中心にコンパクトに絞ったエリアを対象に、民間開発ポテンシャル等も踏まえながら「市街地像(第1次案)」をとりまとめた。また引き続き、アーバンライフ、DOC構想、低炭素化、水と緑の提案を盛り込んだ「市街地像(第2次案)」を2010年5月にとりまとめた。その成果を中間的にとりまとめ、2011年1月と2月に「伊藤滋の東京グランドデザイン2030」連続講演会として対外的に発表した。
  2011年度は引続き、都心エリアを支える都市基盤がネットワークとして機能する性格に鑑み、都市市街地エリアにおける具体的な市街地像の検討を進める。その成果については、政府、地方自治体および企業群に対し、政策や制度の創設と改善、企業活動における新分野の提起をしていくこととする。
2)暮らしとまちづくり
   当センターでは2004年度から自主研究として「環境と暮らしにやさしい住まいとまちづくり」への取り組みを開始した。その前半は「住まい」に焦点を当て、トータルとして省エネルギー性能の高い住宅のあり方についての研究を進めた。そしてこれを社会に定着させるため、2007年度には表彰制度を立ち上げたが、この制度の社会的な認知度が高まりつつあり、成果を発揮しているものと考えている。
  今後は、前半の「住まい」と並行して後半の「まちづくり」にも焦点を当てて研究に取り組むことを検討する。具体的には、昨夏に公表された政府の新成長戦略において「環境未来都市構想」が示されたが、この実現に向けて、「まちづくり」の観点から「エネルギー供給とその設備形成の望ましいあり方」に関する研究方法について検討する。
3)研究会によるプロジェクトづくり
   国の公募調査に対応した受託活動が困難になっている状況を踏まえ、内外の専門家でチームをつくり、ニーズのある地域を把握し、地域産業振興・事業企画の提案を行う。地域と連携し新たに事業開拓していく道を模索する。
例えば、 ①各地にある地域博物館をネットワーク化し、地域の再活性化の提案をすること、②地方自治体における農林水産業の実情を踏まえ、課題解決のための資源循環システム化の提案を行うこと、 などをテーマに検討する。
4)東北地方太平洋沖地震を踏まえた緊急課題
   今般の震災復興への対応は、当センターが率先して取り組むべき課題である。その視点として、被災地域と被災者に対しては、家屋損壊や土地再生に必要な支援策、農漁業における先進的生産基地としての復興、高齢な災害弱者を守る福祉的まちづくり、土地所有の再編による市街地と農村の共生などがあり、これらに対する市町村への有効なサポート方策も検討テーマとなろう。そして、国に対しては、重大な災害危険地域における発電所のあり方、深刻な自然災害国家におけるエネルギー供給と低炭素化戦略との関わりなど国が検討すべき課題について、対応策の提案に取り組みたい。

 2.受託調査事業
1)地域活性化施策支援事業
    1992年に地方拠点法が施行され、そのフォローとして各拠点都市地域が策定した基本計画に基づく整備に関する各種の方策を支援してきた。本件に関わる国土交通省からの受託は終了したが、計画を策定した自治体で構成する全国地方拠点都市地域整備推進協議会からの受託業務は昨年度も継続して行った。今後も地方拠点都市地域整備推進協議会が実施する事業の支援として、地方拠点都市整備の本来の目的に加え、広域行政および地域経済振興に資する成果を生み出すよう取り組む。
2)2030年の東京都心市街地像研究会
    都市再生緊急整備地域制度の充実を念頭におきつつ、政府が提唱する、低炭素化の中期目標年次2030年における東京都心部の将来像を作成する。 この将来像作成のねらいは、「低炭素化、国際経済化、都市美化、高質な居住と文化、そして安心と安全」の5点である。
  具体的には、2008年10月、当センター内に賛助会員などの参加企業による「2030年の東京都心市街地像研究会」を設置して研究を進め、これまで都心3区を中心にコンパクトに絞ったエリアを対象に、民間開発ポテンシャル等も踏まえながら、「市街地像(第1次案)」を、またアーバンライフ、DOC構想、低炭素化、水と緑の提案を盛り込んだ「市街地像(第2次案)」をとりまとめた。
  今年度は引き続き、都心エリアを支える都市基盤がネットワークとして機能する性格を踏まえ、都市市街地エリアを包摂しつつ具体的な市街地像の検討を進める。また今般の震災との関連で、東京など巨大都市における防災機能向上の観点から、備蓄機能を備えた分散かつ自立型の生活・生産拠点などについても検討の対象としたい。
3)ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック表彰制度
    当センターの自主研究として実施してきた「環境と暮らしにやさしい住まいとまちづくり検討委員会」の成果を踏まえて、建物躯体とエネルギー設備機器をセットとして捉え、トータルとして省エネルギー性能の高い優秀な住宅を選定する「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック」表彰制度を2007年度に創設し、昨年度も多数の住宅メーカーから応募をいただいたところである。
  今年度においても、本制度の主催と運営を通じ、住宅の省エネルギーやCO2排出等の削減推進を支援する。特に今年度は、本制度の各地域への普及促進をはかり、地域における住宅の省エネルギー促進への貢献を目指す。
4)日越交流事業の支援業務
    経済発展の著しいベトナムでは、都市の開発や拡大が進行しているが、地方都市部に波及するには至っておらず、これから都市問題が増加すると想定される。本業務は、日越行政官交流事業(2006~2009年)後の具体的なプログラムを支援し、もって人材交流、経済交流を促進し、国際的な地域振興を推進するものである。昨年度は、自治体国際化協会の助成も得て、ベトナム国フートー省ベッチ市と奈良県橿原市との交流事業として保健医療協力を始めたが、今後はその発展形として、専門家人材交流、製薬業提携、学校提携等を模索する。
  加えて、国内における他地域での交流を促進し、ひいては経済交流へとつなげていく。併せてベトナム他地域における地域開発、事業支援に貢献すべく業務拡大に努める。 (ベッチ市・橿原市交流事業、ダラット市・富士河口湖町交流事業の支援)
5)外苑東通り研究会
    本調査は、都市再生緊急整備地域内の未整備な主要幹線道路において、主要幹線に相応しい街路整備を進めるための沿道市街地整備のあり方や課題について、今日的社会経済状況や時間経過に伴う地域内の動向を視野に入れながら、前年度までの検討成果を継続的・発展的に検討・研究を行うことを目的とする。 具体的には、緊急整備地域「環状二号線新橋周辺、赤坂・六本木地域」の市街整備において“軸”となりうる「外苑東通り沿道地域」を対象としつつ、当該沿道環境に関するあり方およびその実現方策の調査・研究を行うものである。 昨年度は、平成20年度以降に研究・検討してきたエリアマネージメントの視点 を背景としながら、六本木通りにおける東京都・シンボルロード整備事業の実施を契機とした、六本木エリアで活発化するみちづくりへの地元活動支援などを行った。 今年度は、引き続き、歩行者環境の高質化、歩行者回遊ネットワークの形成等について、地元組織等への支援活動を通じ、将来的展開策を検討して行く。また、都市計画道路の未整備状況については、あらためて関係機関に働きかけを行う。
6)景観まちづくりに関する意見交換会
    電気事業者は、「良好な景観の形成」に資する設備形成に積極的に寄与したいとの意向を有しており、かつ、それを実現する力のある企業である。その際、供給義務や料金負担の公平性など公益事業である電気事業の特性を考慮し、現実的な事業運営に大きな混乱が生じないように配慮することが重要な課題となる。ついては、幅広い専門知識と高い見識を有し社会に大きな影響力を持つオピニオンリーダーの先生方と電気事業者幹部が、景観問題に関する自由な意見交換を通じて理解と認識を深めることで、良好な景観づくりに貢献する設備形成を推進していく。
7)その他
    地方自治体が実施を予定している、各種調査・計画・企画事業業務の受託に取り組む。また、研究事業助成を行っている各種団体における地域振興に関する調査研究の獲得を目指す。
 Ⅳ 公益法人制度改革への対応
   2008年12月に公益法人制度改革3法が施行され、当センターとしても2013年11月までの移行期間内に、新法人に移行することが求められている。   当センターとしては、まずは従来通り、機関誌の発行や研究懇談会のように公益的な事業(実施事業)について着実に継続する。その一方で、公益以外の事業(その他事業)について、公益財団法人に対して事業費率や営利競合に関する厳しい規制を求める新基準や社会情勢などに鑑み、より自由な事業活動を実現できる体制を志向しつつ、新法人への移行準備を着実に進めて行く。

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