平山 洋介・ 斎藤 浩 編

2014/5

 
『住まいを再生する─東北復興の政策・制度論』
岩波書店(定価2,900円+税、2013.11)

 東日本第震災から3年が過ぎたが、今なお復興には程遠く、特に核となる住宅復興の立ち遅れが目立つ。そんな中本書は、震災復興をテーマとしているが、徒に嘆き悲しんだりすることなく、被災地各地で起きてきた事実を冷静に把握・分析し、問題提起している。
 副題に「東北復興の政策・制度論」とあるが、正にその通りで、全体を3部11章に分け、第1部は復興の枠組み、第2部は具体的な事業制度、第3部では原発事故についての記述で構成され、しっかりとしたロジカルフレームとなっている。各章はそれぞれその分野の専門家が独自の知見を持って論述しており、引用出典・参考文献も明示され、震災復興の研究資料、データベースとしても有用である。
 第1部「復興の枠組みについてみる」は、復興に関する制度論や予算措置の枠組みの紹介と現状分析である。ややもすると復興の現場では、震災復興土地区画整理事業、防災集団移転促進事業や災害公営住宅等の、現実に動いている事業に関心が集まりがちであるが、本書はこれらの前提となる政策や制度についての紹介と解説から始めており、さらにはそのバックグランドを阪神淡路大震災にまでさかのぼるなど重厚な内容となっている。その一方、復興特区法の紹介では、現場に即した観点から下位の交付金事業を最初から解説し、上位の復興整備計画、復興推進計画へと逆順の解説とするなど、ともすれば眠気を誘いがちな制度論を現場から分かり易く解説している。
 第2部「津波被災地の苦闘-持続可能な地域へ」では、本書のタイトルである被災地の住宅再生に論点が移り、阪神淡路大震災以来の仮設住宅の歴史的背景や東日本大震災との被災者事情の違いなど、読めばなるほどと思う掘り下げがなされている。

 

 第3部では、今や被災地だけの問題にとどまらなくなってしまった原発事故について、原発そのものの歴史的背景をたどり、起こってしまった事実に対して綿密な分析が行われている。その上で避難民が現在置かれている状況を把握し、これからの生活再建の可能性と問題点及び課題を提起している。

 このように本書は震災復興の制度論のあり方から、住宅の復興・居住の自由とは何か、生活再建の方策とは何か、これらを踏まえた復興の手法の発展に向けて、研究者・まちづくりプランナー・弁護士・自治体職員など、各分野の専門家が多岐にわたる政策・制度の課題を丁寧に洗い出しており、大震災多発国日本における復興のあり方について啓発され、考えさせられる本である。一般の方はもとより、研究者にとっても読みごたえのある内容となっており、一読をおすすめする。

(株式会社オリエンタルコンサルタンツ
震災復興推進室 技術主幹・福田 聖次)

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