2015年6・7月号
通巻608号

特集 クラウドファンディングによる地域活性化

この数年間で日本国内でも急速に盛り上がってきたのが、クラウドファンディングである。クラウドファンディング(Crowdfunding、以下、CF)とは、crowd(群衆)から資金調達(funding)という意味だが、資金を集めるだけでなくそれ以外の効用も大きい。供給側からは、不特定多数の人がインターネット経由で、特定の人や組織に資金の提供や協力などを行うことであり、需要側からはネットを活用した小口資金調達と表現できるだろう。そしてCFの需要と供給をマッチングさせる運営組織も急増している。 地方での活動主体がその活動や事業に取り組む際に、活動資金や事業資金に困って取組みが停滞することも多い。CFは、通常の資金ルート(銀行、行政補助金等)とは異なる方法で、一般の人からの資金(寄付金、活動・事業資金)の獲得を拡大する動きである。この数年で、地域活性化の新たな方法として期待されている。また、第二種金商法の改正により、今後ますます小口の資金調達の可能性が高くなり、地方での新たな事業活動に対する資金環境が改善されることが期待されている。
CFがうまく機能するためには、プロジェクト提案が、如何に一般の人々からの「共感」を得られるか、そして如何なる「参加」が可能か、さらに「共有化」が重要と考えられる。
CFには、現代社会において多面的な可能性があると考えられるが、本特集では、CFにより、地方での社会活動や地域ビジネスに対してどのような可能性を持ちつつあるのか、地域の活性化につながる方策について考察する論考をもって構成した。
まず、総論として深尾氏に、CFが地方でもつ可能性と課題について論じて頂いた。次に、杉本氏には、政府が進める「ふるさと投資」連絡会議に関与しつつ実務的な観点からCFの内実について詳しく解説いただいた。特に、投資という観点で、自治体や地域金融機関の役割についても言及していただいた。 実際にCFを運営する仲介会社として、寄付型から宮本氏、購入型から斎藤氏からマッチングの知恵と事例を紹介頂いた。さらに地域内でのマッチングと循環、増殖を促す取組みとして、古田氏、杉浦氏に登場頂いた。CFが機能するためには地方でこれから重要な役割を果たすと思われる「まとめ役」の意義を松本氏に解説頂いた。
資金調達という観点でCFとの比較から、保田氏にふるさと納税による成果事例、植田氏からはミニ公募債による成果事例を紹介して頂いた。地域内では、事業資金を必要とするNPOとCFを繋ぐ中間支援組織の役割を鈴木氏から、地域内で事業資金としての擬似私募債の役割を多賀氏から紹介頂いた。CFを活かすために行政の役割を上山氏から、そして国の支援を掲載した。最後に投資家の関心をコラムで取り上げてみた。
CFの発展で地方の活力を高めたい。

一般財団法人日本地域開発センター主任研究員
北川 泰三

特集にあたって
北川 泰三 一般財団法人日本地域開発センター主任研究員
クラウドファンディングが拓く地域づくりの新しい形
深尾 昌峰 龍谷大学政策学部准教授
地域のやる気を引き出すクラウドファンディング
杉本  健 鞄本政策投資銀行東海支店長(前企業金融第6部長)
共感寄付で地域への息吹をどう起こしていくか
宮本  聡 一般財団法人ジャパンギビング事務局長
出身者と出身地をつなげるFAAVO
斎藤 隆太 潟TーチフィールドFAAVO事業責任者
鎌倉限定クラウドファンディング iikuni
古田 智子 カマコンバレー iikuni運営事務局
LOCAL GOOD YOKOHAMAが目指すコミュニティ経済とは
杉浦 裕樹 特定非営利活動法人横浜コミュニティデザイン・ラボ代表理事
「とちぎファンズ」が目指すクラウドファンディング支援とは
松本  謙 「とちぎファンズ」運営者、潟tァーマーズ・フォレスト代表取締役
ふるさと納税によるクラウドファンディング、北海道東川町での効果事例
保田 隆明 昭和女子大学准教授
地域力を高める資金調達〜ミニ公募債とクラウドファンディング〜
植田 浩一 公益財団法人ふくしま自治研修センター主幹
ソーシャルビジネスとクラウドファンディングを繋ぐ
鈴木 和隆 特定非営利活動法人うつくしまNPOネットワーク事務局長
擬似私募債の全体像とクラウドファンディング
多賀 俊二 中小企業診断士、「擬似私募債研究会」主宰
西粟倉村の森の学校による資金調達と行政の役割
上山 隆浩 西粟倉村産業観光課長
「ふるさと投資」連絡会議の取り組み
内閣官房副長官補室(地域活性化担当)、内閣府地方創生推進室
クラウドファンディング手法を活用した官民連携まちづくりの支援施策について
国土交通省都市局まちづくり推進課
エンジェル税制を活用した投資型クラウドファンディング促進策について
石井 芳明 経済産業省経済産業政策局新規産業室新規事業調整官
コラム:投資家のつぶやき
ファイアフェレット 投資ブロガー
◎連載(第10回)現場で活躍できる自治体職員の条件─出る杭を伸ばすには
自治体職員に必要な歴史認識〜地域公務員をめざせ
浦野 秀一 あしコミュニティ研究所所長
◎連載(第2回)モーターシティ、トリノの最新事情報告−
未来を拓くソーシャル・イノベーション—欧州連合戦略と社会的起業
大石 尚子 龍谷大学政策学部准教授
Giancarlo Cotella トリノ工科大学助教授
表4
生きる−浜田市
三浦 大紀 潟Vマネプロモーション代表取締役

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