2015年8・9月号
通巻609号

8・9月号 特集
国は人口減少局面のグランドデザインを示せるか?(国土形成計画特集)

国は8月14日、今後10年の国づくりの指針となる新たな国土形成計画(全国計画)を閣議決定した。
全国総合開発計画(全総)の後継となるこの計画について、新聞各紙も、超高齢化や長期的な人口減少への危機感を踏まえていることや、市街地の集約による都市サービスの効率化を進めるコンパクトシティ構想を盛り込んでいることなどを伝えている。しかし、高度・安定成長期に全総が世論や政策に与えた影響の大きさを知っている人たちは、今回も、前回の2008年の計画と同様、注目度が低いと受け止めているだろう。
自分も時々、国土計画についての論文や論説を書いているのだが、人によっては「まだ全総の計画を研究している人がいるのですか」という目で見られることさえある。高度成長や開発の時代は終わったし、すでに地方分権が進み、国ではなく地域が主体性をもって地域づくりを進める時代にあって、そのような感想を持たれてしまうのも仕方ないかもしれない。
しかし、全国土的な視点がもう必要ないと考えられているかというと、それはそうでもないようだ。増田寛也元総務大臣が座長を務める民間シンクタンク「日本創成会議」による一連の提言、すなわち昨年5月の「ストップ少子化・地方元気戦略」(消滅可能性都市リストの発表)と今年6月の「東京圏高齢化危機回避戦略」(高齢者移住の候補地域の提案)は、いずれも非常に大きな注目を集めている。具体的な都市名を列挙して国土的な問題提起と提案を行っている点で、日本の将来のグランドデザインといってよいほどの影響力がある。ただし民間の提案であることから、政策的な影響力は間接的なものにならざるを得ない。具体的な提案には各界のオーソライズはなく、賛否は渦巻いている。
他方、国が国土的な視点での強い働きかけをあきらめたのかというと、それも違う。昨年度から始まった地方創生にかかる取組では、ひと・まち・しごと創生法の制定・施行を受けて、主に人口についての長期ビジョン・総合戦略を示し、地方圏での人口回復や雇用について、国として達成すべき具体的な目標を設定した。地方自治体にも具体的な政策の立案と実行を促している。社会基盤整備については、国土強靭化の取組が、高度成長期とは趣旨は異なるけれども全国的な規模で強力に推し進められようとしている。これらは政策の推進に補助金等の裏付けがあることから、国土に直接的な影響力を持っている。ただ地方創生は人口増や雇用の促進、国土強靭化は特に防災面での基盤整備であり、総合的なグランドデザインとはなっていない。
こうした状況の中で、今回の国土形成計画の策定はどんな意味を持つのか。国は、真の意味で国土のグランドデザインを提示し、人口減少局面の地域をよりよい方向に導いていくことができるのか。国土計画とその主要な論点について、主たる政策担当者と第一線の論者に語って頂く。

「地域開発」編集委員・東京大学准教授
瀬田 史彦

特集にあたって
瀬田 史彦 「地域開発」編集委員・東京大学准教授
現代の国土計画−縮小時代の国土のデザイン
大西  隆 豊橋技術科学大学学長
人口減少社会における新たな国土形成計画の基本的考え方
北本 政行 国土交通省国土政策局審議官
地方創生と国の役割
山崎 史郎 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部地方創生総括官
北海道からの人口流出−産業構造を中心とした背景
五十嵐 智嘉子 北海道総合研究調査会理事長
東京の危機
高橋  泰 国際医療福祉大学教授
現代の地域格差
豊田 哲也 徳島大学教授
田園回帰の可能性と「小さな拠点」〜集落に人と仕事を取り戻す
藤山  浩 島根県中山間地域研究センター研究統括監
人口減少社会における定住自立圏構想の現況と課題
辻  琢也 一橋大学教授
対流の促進とグランドデザイン(地域の視点から)
戸田 敏行 愛知大学教授
人口減少局面の国土利用計画−国土形成計画の記載事項に関する国土利用計画法制度の活用の可能性と課題−
中村 隆司 東京都市大学准教授
◎連載(第3 回)−モーターシティ、トリノの最新事情報告−コロナ・ヴェルデ(戦略的景域計画)
清水 裕之 名古屋大学教授
◎寄稿(第2回) 山間地でデマンドバスを運行−通学と通院を意識した展開(島根県吉賀町)−
関  満博 明星大学教授
◎<書評>歴史を語りながら未来を示唆する 『北海道開拓の空間計画』
延藤 安弘 NPO法人まちの縁側育くみ隊 代表理事
◎連載(第11回)現場で活躍できる自治体職員の条件−出る杭を伸ばすには
シティ・プロモーションと地域CIの教訓
浦野 秀一 あしコミュニティ研究所所長
表4 生きる−木曽町
榎本 浩実 岐阜県木曽町地域おこし協力隊

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