2016年8・9月号
通巻615号

特集 真庭ライフスタイル〜ひと・まち・市役所による循環型社会へ

地方創生が叫ばれ、その対応のため、地方では人口・産業政策を中心にさまざまな議論がなされている。国では、新たな国土形成計画が策定され、「対流促進型国土」の形成を目指すことになった。地域では、「コンパクト+ネットワーク」を念頭においた地域構造を指向し、「稼げる国土」と「住み続けられる国土」の両立を目指すとされている。国土審議会計画推進部会では、この2つをテーマとした委員会で、推進方策が議論されている。
本誌の地域特集として、岡山県真庭市を取り上げた。岡山県北部、旭川上流域に位置する真庭市は、2006年のバイオマスタウン構想からはじまり、2015年の1万kw木質バイオマス発電事業で全国的に有名になった地域である。2014年度に策定した真庭市総合計画では、「真庭ライフスタイル」を標榜している。まだ動きはじめたばかりではあるが、すでに萌芽があり、その取組みの現状を取上げ、地域づくりへの情報提供とした。
最初に、太田昇真庭市長の地域経営に対する考えを詳しく論じていただいた。次に3人の真庭人と真庭に深く関わってこられた澁澤寿一氏との座談会を設け、そこから真庭の変化が読み取れるようにした。誌面構成のキーワードは、「里山資本主義」とした。地域の自立を考えた時に、域内への収入を増やし、地域内経済循環を重層化し、拡大していくことが重要である。
真庭の場合、林業、木材産業、そしてバイオマス産業を展開し、さらにCLT(直交集成板)による新たな産業の芽が出始めている。農業においても観光を含めて、6次産業化、ネットワーク化が広がりつつある。こうした産業を元に産業観光の展開を図っている。これらの動きを「大きな里山資本主義」とした。真庭市内では、各地で地域資源の発掘から、魅力づくり、地域産業や雇用に繋がる地域振興会社をつくろうとしており、徐々に芽が出始めている。その一例が、アシタカであろう。こうした価値ある暮らしづくりが、「小さな里山資本主義」と言える。最後に里山資本主義を担う人材をあげた。今までは「21世紀の真庭塾」の人々が地域をリードしてきた。これからは、まにワッショイ等の若手がどう繋いでいくか。地域を担う人材を育てるなりわい塾がスタートし、協力隊と共に定住促進に期待が持てる取組みである。こうした人々が循環型社会をつくる主体である。
日本地域開発センターは、2000年に旧久世町で木質バイオマスのマーケティング調査に関わって以来、バイオマスタウン構想等で地域に寄与してきており、その目で真庭市を見ると、9町村が合併した広域自治体であるが、徐々にまとまりが良くなってきており、いろいろと異なる地域を多様性として受け止め、それぞれの個性を磨く形に発展してきているのではないかと感じる。
大きな里山資本主義とは、稼げる国土づくりであり、小さな里山資本主義とは、住み続けられる国土と理解できるが、両立してこそ安心し住み続けたくなる国土となり、活力あり、UIターンや子育てができる地域になっていくと思う。

一般財団法人日本地域開発センター
主任研究員 北川 泰三

特集にあたって
北川 泰三 一般財団法人日本地域開発センター主任研究員
真庭市における地域経営の展開について?課題と展望
太田 昇 真庭市長
座談会:真庭ライフスタイルと夢
澁澤 寿一・中島浩一郎・清友 健二・真柴幸子
■大きな里山資本主義
真庭市の方向と産業について
上島 芳広 真庭市総合政策部総合政策課長
中井 靖 真庭市産業観光部産業政策統括監
オール真庭で動かす木質バイオマス発電事業
中島浩一郎 真庭バイオマス発電株式会社代表取締役社長
21世紀の素材CLT 真庭における取り組み
安東 真吾 銘建工業且謦役総務部長、(一社)日本CLT協会事務局長
真庭バイオマテリアルの取り組み
大月 隆行 真庭バイオケミカル株式会社代表取締役社長
蒜山酪農の6次産業化〜付加価値を高めて経営安定へ〜
石倉 健一 蒜山酪農協同組合顧問
ひるぜんワインが映える真庭ライフスタイルを目指して
植木 啓司 農業生産法人ひるぜんワイン有限会社代表取締役社長
顔の見える産業観光「バイオマスツアー真庭」
中村 政三 一般社団法人真庭観光連盟事務局長
高齢農家が活躍する舞台となった「あぐりネットワーク」
吉永 忠洋 真庭市副市長
■小さな里山資本主義
真庭市における地域振興〜地域の個性を活かすために〜
戸田 典宏 真庭市総合政策部交流定住推進課長
勝山にしかできないまちづくりの方法
北川 卓 フレームデザイン株式会社代表取締役、NPO勝山町並み委員会理事、真庭市政策アドバイザー
「共生」と「協調」により「幸せに暮らす地域」を目指して
赤木 直人 一般社団法人アシタカ代表理事
大山隠岐国立公園蒜山高原 地域資源を活かした観光まちづくりの取り組みと新しい風
宮永 優 蒜山高原Cultivate-Garden 観光ブルーベリー園オーナー(元真庭市職員)
ご当地グルメを活用したまちおこし
石賀 幹浩 ひるぜん焼きそば好いとん会会長
湯原温泉女将「シャクナゲ会」が地域を元気に
池田 理愛 湯原温泉・花やしき 女将
湯原っしでコミュニティ再生
湯原っしい実行委員会  
美甘地区における地域資源を活用した地域活性化への取り組み
幡 建樹 (有)ラック コンサルティング事業部長
北房・ホタルの里づくりで、地域観光の発展、特産品開発へ
坂本 信広 北房観光協会事務局長
市民参加型バイオマス循環社会を目指して〜バイオディーゼル燃料のシステム化と生ゴミリサイクル
河野 慶治 岡山県会議員(有限会社エコライフ商友 前代表取締役)
地域考える真庭の文化創造と情報発信
池田 晃浩 公益財団法人真庭エスパス文化振興財団事務局長
■人材の役割
持続可能なまちづくり・循環型社会の礎を築いた『21 世紀の真庭塾』
川村 雅人 真庭市政策アドバイザー(地域プランナー)
まちで遊び、まちを遊ぶ! まにワッショイ
岡本 康治 まちづくり市民応援団 まにワッショイ代表
真庭市地域おこし協力隊隊員の役割と活動
松尾 敏正 一般社団法人コミュニティデザイン代表理事
真庭市地域おこし協力隊隊員
真庭なりわい塾の目指すもの
吉野 奈保子 NPO法人共存の森ネットワーク理事/事務局長
◎連載 アメリカの都市圏ガバナンス(2)
ツインシティズ都市圏におけるガバナンス? Metropolitan Council を中心に
今里 佳奈子 龍谷大学教授
◎連載(第2 回)木村俊昭の本業(work & lifework)のススメ−地域創生の方程式
地域創生の人財養成プログラムとは
木村 俊昭 東京農業大学教授、内閣官房シティマネージャー(自治体・特別参与)
◎連載(第3 回)「対流」による「小さな拠点」の活性化〜地方都市の地域連携ビジネスモデル
「漂流する若者たち」の古民家再生「ゲストハウス」
藤村 望洋 一般社団法人日本海洋観光推進機構専務理事、ぼうさい朝市ネットワーク代表
◎連載(第17 回)現場で活躍できる自治体職員とは−出る杭を伸ばすには
自治体職員の「意識改革」とは
浦野 秀一 あしコミュニティ研究所所長
◎センター事業<第492・493 回地域開発研究懇談会>
研究グループ
◎<書評>門脇耕三ほか 著
「シェア」の思想/または愛と制度と空間の関係
  ★内容のページへ
岡部 明子 東京大学大学院教授
Library
編集部  
裏表紙の裏
クラウドファンディングの力 あなたの田舎になりたい宣言!
上塩 浩子 湯原温泉 八景 女将
裏表紙 生きる−真庭市
インターナショナル・シェアハウス「照ラス」へようこそ
カン・ユンス(姜 侖秀) アーティスト

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