2017年2・3月号
通巻618号

特集 高齢社会のまちづくり

今年1月5日、日本老年学会・日本老年医学会の高齢者に関する定義検討ワーキンググループからの提言がなされた。高齢者の定義と区分を次のようにしたいということだ。
 65〜74歳 准高齢者(准高齢期)
 75〜89歳 高齢者(高齢期)
 90歳〜超高齢者(超高齢期)
「従来の定義による高齢者を、社会の支え手でありモチベーションを持った存在として捉えなおす」とし、また「迫りつつある超高齢社会を明るく活力のあるものにする」のが狙いであるとしている。確かに、昔に比べれば、現在の高齢者は10年若いと筆者も感じている。高齢者の仲間入りする60代はまだまだ若く活動的であるし、70代でも後半にならないと虚弱な感じが見受けられない。しかし、60代後半ですでに認知症や身体的疾患が現れてくる人もいる。ヒトの生物学的寿命は120歳あたりらしいが、医療の進歩でどこまで近づくことができるのだろうか。研究者によるこの高齢者の再定義は、現代社会における高齢者の実体にピントを合わせたと言える。そうなってくると、にわかに心配になるのが、社会保障制度、つまり年金がどうなるかであろう。60歳になれば年金受給対象だったのが、近年は65歳に引き上げられ、ややもすると70歳になりかねない状況さえ見受けられる。
世界に先駆け急速に進む日本の高齢社会に対して、全国各地域での対応が急務となっている。
今、高齢社会に対応した地域コミュニティの再構築が喫緊の課題となっているが、それは、高齢者が健康で生き生きと暮らせること、生活困難が生じても安心して暮らせること、こうした仕組みをつくっていくことがポイントとなってくる。
過疎がすすむ農村はもちろんのことだが、大都市では社会関係が希薄化しており、生き生きと暮らせる間はよいが、生活困難が生じると安心して暮らしにくくなる。どのような地域であっても、安心して暮らせることが求められている。そのためには、近年各地域で取組みが進んでいる「地域包括ケアシステム」の構築が必須であろう。そして、虚弱予防に取組み、地域での在宅医療を広げ、その先には病院ではなく自宅での看取りがあることが安心して暮らせる地域であろう。
できるだけ長く生き生きと暮らせることは誰でもが欲していることである。そのためには健康でいることが一番である。去る2月20日、全国80の自治体が集い、「日本健幸都市連合」が発足した。健幸とは、スマートウエルネスのことであり、筑波大学の久野教授が提唱された理念「スマートウエルネスシティ」である。
本特集では、地域で情報技術を活かし、健幸と安心安全を実現するための視点と各種取組みを紹介する。知のネットワーク化を図ることで、高齢社会のまちづくりへのリテラシーを高め、よりよい地域コミュニティを各地で構築されることを期待したい。

一般財団法人日本地域開発センター
主任研究員 北川 泰三

特集にあたって
北川 泰三 一般財団法人日本地域開発センター主任研究員
最期まで笑顔で住み続けられるまちづくりを
-柏プロジェクトの実践を通して-
辻 哲夫 東京大学高齢社会総合研究機構 特任教授
なぜ今、自治体はSmart Wellness Cityに取り組むべきなのか
-健康長寿社会構築のためには「人の健康」に加えて「都市の健康」づくりを-
久野 譜也 筑波大学大学院人間総合科学研究科 教授
フレイル予防のまちづくり
飯島 勝矢 東京大学高齢社会総合研究機構 教授
非日常の「病院死」が減少し、「地域ケア」への転機に
-目指すべきは老衰死 アンチエイジングからウィズエイジングへ
浅川 澄一 福祉ジャーナリスト 公益社団法人長寿社会文化協会常務理事
在宅医療と地域の未来
佐々木 淳 医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長
見附市・スマートウエルネスシティの実現
久住 時男 新潟県見附市長
高齢者を街に連れ出し、介護をミニマム化
松本 武洋 和光市長
まちでみんなで認知症をつつむ
-大牟田市認知症ケアコミュニティ推進事業の取組みと実際
池田 武俊 大牟田市保健福祉部 調整監(兼)保健福祉総務課長
住民の位置情報の「見える化」により地域支え合いシステムの充実を
宮森 健一朗 福島県会津若松市健康福祉部高齢福祉課 主幹
奈良県橿原市/多世代共創でめざす「まちも元気に、ひとも元気に」
-医学を基礎とするまちづくり(MBT)の取り組み-
山村 崇 早稲田大学建築学科助教
◎連載(第5回)木村俊昭の本業(work&lifework)のススメ−地域創生の方程式
まちのブランド化 ひと・もの・ことの創発!
木村 俊昭 東京農業大学教授、内閣官房シティマネージャー(自治体・特別参与) 
◎連載(第6回)「対流」による「小さな拠点」の活性化?地方都市の地域連携ビジネスモデル
都会の若い料理人たちと、若い農家たちの「ツアー&物流ミックス・ニューツーリズム」
藤村 望洋 一般社団法人日本海洋観光推進機構専務理事、ぼうさい朝市ネットワーク代表
◎連載(第19回)現場で活躍できる自治体職員の条件−出る杭を伸ばすには
「公共という仕事」の意味
浦野 秀一 あしコミュニティ研究所所長
裏表紙 生きる−高千穂町
佐伯 絵里子   轄p逡艫ラたび

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