2017年10・11月号
通巻622号

特集 地域シンクタンクの時代〜地域人材が進める地方創生〜

全国各地では、地方自治体が自らの手で策定した「地方版総合戦略」や「地方人口ビジョン」を受けて、地方創生に向けた動きがスタートしています。具体的には、新たに設定された地域の将来像の実現のために、戦略策定に参画してきた「産官学金労言」などの地域社会における多様な主体が協働することで、さまざまな創意工夫を取り入れながら、地域の資源と人材を駆使した地域活性化プロジェクトが生み出されています。
このような動きのなかで、地域社会の重要なステークホルダーである地域金融機関や地方自治体が母体となって設立された「地域シンクタンク」の役割に注目が集まっています。地域シンクタンクは、その設立の経緯や趣旨により、事業内容・規模等はさまざまですが、域内に広範なネットワークを有しており、地域独自の事情を詳細に把握している点で、地方創生を実現していく主体として重要な役割が期待されています。
わが国の地域開発の歴史を遡ってみれば、過去に何度も「地方(地域)の時代」といったスローガンが掲げられてきたにもかかわらず、その都度、国からの財源・権限の委譲がなされないことを理由に自立への道が閉ざされてきました。本来、地域課題解決の主導権を握るべき主体は、誰よりも地域の実態を知る地域関係者です。しかし、その期待に応えるためには、日頃から地域課題やその将来像について議論する場を設けておくとともに、自由で豊かな発想と物事を実践する強い意思で「将来の地域社会をデザインしていく力」を養成しておくなど、意識の面での自立が不可欠となります(参考:「地域イニシアティブの時代」日本経済研究所地域未来研究センター)。
本特集では、全国各地の地域シンクタンクの皆様より、地方創生に向けて自らの組織が中心となり実践している特徴的な事業活動(例:徳島経済研究所のLED アートフェスティバル、とくしまマルシェ等)、ならびに、それぞれの地域で成果をあげつつある先駆的な地域活性化プロジェクト(例:北海道・青森の津軽海峡交流圏、愛知・静岡・長野の三遠南信地域連携、瀬戸内海沿岸のせとうちDMO 等)について、ご紹介いただいています。
また、地域シンクタンクの調査研究スタッフや地方自治体職員に加えて、広く地方創生の担い手となるべき人材に求められるスキルや能力についても、地域シンクタンク代表者(九州経済調査協会 木理事長)と、自らもシンクタンクでの勤務経験者である学識者(関東学院大学 牧瀬先生、北九州市立大学 城戸先生)の双方の立場から論じていただきました。
「『九州(地域)をどうにかしなくてはいけない』といった志を持った人が集まって、『九州(地域)のためになる調査』を行うシンクタンク」(談:木理事長)こそが、地域の将来を国や自治体任せにしない、これからの時代の真の地方創生に不可欠な存在となるのではないだろうか。

『地域開発』編集長・一般財団法人日本経済研究所
大西 達也

特集にあたって
大西 達也 『地域開発』編集長・一般財団法人日本経済研究所
巻頭インタビュー:地域シンクタンクのこれからの役割について
木 直人 公益財団法人九州経済調査協会 理事長
自治体系シンクタンクの動向と展望
牧瀬 稔 関東学院大学法学部地域創生学科 准教授
地域づくり活動への伴走型支援について
千葉 俊輔 公益財団法人はまなす財団 専務理事
北海道新幹線を契機とした青函地域における広域交流
竹内 紀人 一般財団法人青森地域社会研究所 常務理事
タフでアクティブな公務員をめざして
吉岡 正彦 公益財団法人ふくしま自治研修センター 総括支援アドバイザー兼教授
自治体+信用金庫による「協働」により、広域連携・業態間連携等の力で地域活性化に資する
林 郁夫 特定非営利活動法人しんきん南信州地域研究所 所長
瀬戸内地域の連携〜せとうちDMOの挑戦〜
北村 哲彦 一般財団法人岡山経済研究所 主任研究員
徳島活性化に向けた取り組み〜行動するシンクタンクを目指して〜
田村 耕一 公益財団法人徳島経済研究所 顧問
自治体内シンクタンク〜民間主導の地方創生総合戦略へのアプローチから〜
檜槇 貢 佐世保市政策推進センター長
プラットホームをめざして〜連携は力なり〜
横川 憲人 一般財団法人北海道東北地域経済総合研究所 専務理事
財団日経研 地域未来研究センターの「地域シンクタンク研修」
〜地域の将来像を自らデザインするために〜
大西 達也 一般財団法人日本経済研究所 常務理事 地域未来研究センター長
これからの地域シンクタンクに求められる能力とは
城戸 宏史 北九州市立大学大学院マネジメント研究科 教授
◎寄稿
都市拠点形成に向けた容積移転プログラムのポイント:日本の現状と米国ワシントン州キング郡及びシアトル市の事例
村山 顕人 東京大学大学院 准教授
◎連載(第3回)地域自治組織は、今!!
地域の中でお金を回して財源を確保する
斎藤 主税 特定非営利活動法人 都岐沙羅パートナーズセンター理事・事務局長
裏表紙 生きる−鶴岡市
佐久間 麻都香 コトブキハウス、柿守人

トップページへ戻る