地域社会の担い手の不足が指摘されて久しい。2015年に国の地域政策の目玉として「まち・ひと・しごと創生本部」主導で始まった地方創生政策も、当初計画の5年が経過し、新たに設けられた総合戦略、基本方針のもと、2020年からは第2ステージに移行している。この間、地域社会では、「しごと」については一部の地域で雇用・所得環境の改善が見られたが、「ひと」については「地方への新しい人の流れをつくること」が基本目標の一つに掲げられたものの、東京一極集中の流れを変えることはできなかった。
そのため、第二期総合戦略では、将来的な移住につながる地域の担い手として、「定住人口」や「交流人口」に加えて、特定の地域に継続的に多様な形で関わる「関係人口」の創出・拡大が新たな重点施策として掲げられている。また、地方創生の基盤をなす新たな人材の掘り起こし・育成についても、「高校魅力化(島根県海士町等)」や「地域人教育(長野県飯田市)」など特定地域における先行事例の成果を踏まえて、高等学校での地域の担い手人材の育成にも着手されている。
「まち・ひと・しごと創生法」では、その目的の中で「ひと」について、「地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保」を掲げている。しかしながら、多くの地域においては、その効果を可視化しやすい移住促進等に注力する一方で、本来最優先で取り組むべきであった地域に根差した担い手(地域住民、地方自治体職員、地域産業人、地方議会人等)の育成プログラムやそのための仕組み(場)づくりに、必ずしも十分な資源が投入されてこなかった。私たちは改めて「学校教育・社会教育を通じて住民の人材力を高めることが、地域の存続にとって最も重要であること(藻谷氏)」を認識すべきではないだろうか。
本特集では、長野県飯田市における人材サイクルを意識した地域人教育を発展させた連携力重視型のイノベイティブな産業人材育成(牧野氏)や、行政(青森県)が圏域に点在する地元の担い手が集まり協働できる環境(場)を提供し、そこでの自主的な活動を通じて担い手人材の力を高めている津軽海峡交流圏ラムダ作戦会議(森氏)など、これまで全国各地で実践されてきた地域の担い手人材の育成の取組みを紹介している。加えて、地域住民にとって域外の視点が学べる「越境学習」の実効性(藻谷氏)や、地方議会人にとっての議員提案政策条例を通じた「行政マネジメント機能」の必要性(牧瀬氏)、さらには、地域課題に最も近い立場にあるNPOの視点からは、地元人材の価値に着目した「学びの資源の地産地消」による好循環づくり(古賀氏)や、「学んだ者同士のつながり・ネットワークづくり」(大滝氏)、「育成した人材の受け皿となる地域運営組織の耕し」(嶋渡氏)など、それぞれの主体の育成にとって重要な視点が提供されている。
本特集から得られる様々な示唆を通じて、交流人口や関係人口を巻き込みながら本来地方創生の主役となるべき地域の担い手の可能性を拡げるとともに、より多くの人々が地域社会に関わるきっかけが提供できれば幸いである。
私たちの未来は既にどこかの地域の中で芽吹き始めている。「地域開発」はその芽を見出しそこに光をあて続ける存在でありたい。