2024年最終号
通巻650号

特集 これからの地域開発の課題と展望
~失われた30年から国富の拡大に向けて

 日本地域開発センターは、2024年で60年を迎えました。そして、「地域開発」誌は、今回650号が最終号となります。
 日本地域開発センターの初期の目的は、高度経済成長の中で、産学協同で、国土の将来像を世に問い、国内の地域開発の方針、格差是正の方針を示して、政府への提案を行い、経済発展、生活向上を実現するといったものでした。その後は、地方の時代が叫ばれて、まちづくりの領域を切り開いてきました。バブル崩壊してから、30余年、都市開発・地域振興等、個別テーマ研究の推進を果たしてきました。
 「地域開発」誌では、国土開発、地域開発、都市開発、都市論、地方の時代、まちづくり、地方自治、地域文化論等、多種多様な領域で都市づくり・地域づくり・地域活性化の話題を取り上げてきました。
 さて、最終号の前半では、当センターの後期にもあたる「失われた30年」の内実は何か、国富は如何にして拡大可能かという課題としました。
 後半では、「これからの地域開発」の課題と展望について、当センターの理事・評議員、編集委員、関係者に、国土計画・地域計画を始めとして、これから取り組むべき視点とその具体的内容を自由に展開していただきました。
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 この30年、国民の所得が上がらないのは、政治・政府の政策が間違ってきているからだ、というのは自明ではないでしょうか。敗戦後の対米従属の下で、米国の圧力により、プラザ合意以降、国内の発展の努力以上に、国富を毀損する売国政策と利権政治が続けられていること、にその原因があるのではないでしょうか。
 日本は日米安全保障条約のもとで、「軽武装・経済成長」で一気に世界第2位の経済大国となりました。
対米従属によって、「自社体制」が続きましたが、東西冷戦崩壊で対日要求が強まりました(鮫島)。1985年プラザ合意以降、日本の経済成長に対して、米国による対日貿易赤字削減のためのさまざまな圧力がずっと続いています(川上)。特に、日本弱体化は、緊縮・増税を打ち出した橋本政権からです(室伏)。日本の市場開放は、多方面にわたっています。日本経済に株主資本主義を受け入れ(原)、農業でも市場開放で農産物も打撃を受け続けた(鈴木)。また農地、山林だけでなく水源も外資に買収されている(平野)。国土の安全保障は危機的な状況です。国と地方の関係も行政間の役割にはムダが多い(穂坂)、市民の命もプランデミックという外圧に晒されている(池田)。あらゆる局面で、課題の克服が求められており、そのヒントが各論考から、読み取っていただけると思います。
 日本経済を支えてきたあらゆる制度を緩和・開放し、崩されて、国富が毀損される状態が続いています。世界は、米国一極覇権主義から、多極化へ、BRICsの台頭によりドル基軸通貨も変わろうとしている今こそ独立自尊で、地域開発再考のチャンスです。最近、外為特会外に未曾有のファンド(800兆€)の存在が指摘されています。それを以て、国富の毀損を止め、予算を伴う国土の強力なる全体像の必要性を唱えていくべきではないでしょうか。

日本地域開発センター 北川 泰三

特集にあたって
北川 泰三

一般財団法人日本地域開発センター

●失われた30年から国富の拡大に向けて
「失われた30年」の始まりと終わり?
川上 征雄

公益財団法人都市化研究公室 特別研究員

「失われた30年」を取り戻すために政治がなすべきこととは?
室伏 謙一

室伏政策研究室 代表 政策コンサルタント

政治刷新には、左右対決から上下対決を争点に~失われた30年を取り戻すために
鮫島 浩

政治ジャーナリスト

地域経済の担い手、未来を築く鉄道会社と公益資本主義の勧め
原  丈人

SHANGRI-LA RAILWAY CORPORATION(1937年創業)社長

国と地方の役割分担の明確化で、自己責任の確立と行政経費のムダを削減~失われた30年を取り戻すために
穂坂 邦夫

一般財団法人日本自治創造学会 NPO法人地方自立政策研究所 理事長

2009年の新型インフルエンザ対策から世界・政府の不条理を正して、自治の回復を!~市民のくらしと生命を守るのが議員の役割
池田 利恵

日野市議会議員 全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会事務局長
mRNAワクチン中止を求める国民連合副代表

失われた農政を取り戻し、食料安全保障を確立する方策
鈴木 宣弘

東京大学大学院農学生命科学研究科 特任教授

失われる国土の安全保障
平野 秀樹

NPO法人森林セラピーソサエティ副理事長 元姫路大学特任教授

●これからの地域開発
失われた30年を超えるための地域の課題
大西  隆

一般財団法人国土計画協会会長 東京大学・豊橋技術科学大学名誉教授
一般財団法人日本地域開発センター 元理事長・編集長

国土計画と均衡ある国土の発展
光多 長温

公益財団法人都市化研究公室 理事長

発展による国土の均衡化
山﨑  朗

中央大学経済学部 教授

広域圏における「シティ・リージョン」の展開をめざして
後藤 春彦

早稲田大学 副総長/教授

地球環境時代のグリーンインフラ・プランニング――危機に瀕する首都圏と神宮内苑・外苑
石川 幹子

中央大学研究開発機構 機構教授 東京大学名誉教授

少子長寿社会における「こどもまんなかまちづくり」がひらく多世代参加のまちづくり
清原 慶子

杏林大学客員教授 こども家庭庁参与 前三鷹市長

地域経済の変容とこれから
松永 桂子

大阪公立大学 商学部・経営学研究科 教授

人口減少の波を越える地域再生の道
岡﨑 昌之

法政大学名誉教授

現代アーバニズムから持続可能な都市モデルの模索
蓑原 敬

都市プランナー

地域開発の新たな目標
瀬田 史彦

東京大学 准教授

近代都市計画思想を問い直す――気候変動/格差社会に挑む――
矢作  弘

龍谷大学名誉教授

地域セクターに公式性は必要か
根本 祐二

東洋大学 教授

島からみる地域開発 
荒井 良雄

東京大学名誉教授

規範の檻の中から
岡部 明子

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授

「地域開発」誌と私~編集委員としてともに歩んだ17年~
大西 達也

『地域開発』誌 元編集長

発行人談話 
伊藤 滋

一般財団法人日本地域開発センター理事長 東京大学名誉教授

ライブラリ・書評
編 集 部

裏表紙 生きる(総集編(下))
編 集 部

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