<6月のシンポジウムから>
2000/07
 
■テレワークDAYシンポジウム/テレワーク JAPAN 2000
 
−ポジティブワーク・フリーライフ− 「ニューライフスタイルはすぐそこです」
2000年6月6日 於 東京・有楽町朝日ホール

 本誌6月号でも案内した標記シンポジウムが去る6月6日に開催された。専門家による基調報告やパネル討議に加えて、漫画家サトウサンペイ氏による特別講演も行われ、約600名近い参加者が熱心に聞き入った。シンポジウムの詳細は、7月初旬の朝日新聞紙上で紹介される予定なので、ここでは概要を報告する。

 「テレワーク」という語は、用語事典などにも、取り上げられるなど、すでに市民権を得つつあるようだが、21世紀のライフスタイル、ワークスタイルにどう関わるのであろうか? これがシンポジウムのメインテーマであった。

 情報通信機器の急速な発達により、情報通信は、種々の形態で場所や時間を選ばずに行えるようになり、テレワーク(情報通信を使って場所や時間から自由に働くこと)が当たり前になる時代が近づいているようだ。テレワークの意味や現状については本誌特集をお読みいただきたいが、「テレワーク」という言葉になじみのない読者には「在宅勤務」という方が理解しやすいかもしれない。「痛勤」からの開放、地域や家族との時間の共有がもっとも手軽にできるのは、在宅勤務というわけである。

 しかし、テレワークは在宅勤務だけとは限らない。いまや情報通信機器の発達で、移動中の乗り物の中さえ仕事場に変わる時代をむかえている。ゆとりある生活と充実感のある仕事を手にするために、テレワークをどう取り入れ、どう活用できるのか、可能性は広がっているようだ。また、少子高齢化が進むにつれ、従来の青壮年男性中心社会のままでは、就業者の大幅な減少は避けられないことから、主婦、高齢者、障害者の就業機会の拡大が必要とされるが、これらの人々にとって、テレワークが社会参加を拡大する強力な武器となり得る。

 調査(日本テレワーク協会)によれば首都圏では95年に2.1%であったテレワーカー(週1回以上テレワークする人)は、2000年には5.7%になった。また、国土庁の推計に拠れば2015年には6人に1人はテレワーカーという時代が訪れるという。しかし、実際にテレワークをとりいれるか、という調査(協会)では、企業でテレワークの導入を予定している、あるいは将来検討したいと回答したのは12%、それに比べ就業者でテレワークを希望するのは52%に昇る。まだまだ組織型社会の日本で、このテレワークへの意欲のギャップを埋めることが今後の課題であると基調講演で大西氏は提起した。

 とはいえ、テレワーク導入を検討する企業はここ2年ほど増えているという。営業マンの業績を上げるため、また、子育て中の女性、あるいは介護で思うように働けないなど、出社が思うに任せないキャリアある人材を活用することを目的としてテレワークを検討するようだ。実際にテレワークを導入している企業は、取り入れやすい部門から進めているようだが、テレワークに不向きな仕事はほとんどないとパネリストたちは言う。

 問題はテレワークという働き方の形態を成功させるには、企業が今までのやり方や考え方を変革するという姿勢を持つかどうかのようだ。テレワークの推進には就業者よりも、むしろ企業側にとってどのようなメリットが生まれるかを企業がきちんと理解することに鍵がありそうだ。無駄を省き、効率を上げる、そのために何をすればいいのか。

 テレワークは出社しなくていいということではない、会社に行かずにできることは行かないでやってしまおうということである。通勤は無理でも開発プロジェクトに加われるスキルを持った障害者は自宅からアイディアを出し、企画を立てることができる。そしてそれをネット上で回覧し意見交換もできる。なにも本社の会議室に集まらなくても参加者は国内でも国外でも可能である。個人が自分の能力と生活スタイルに合った仕事のし方を可能にする。脚光を浴びているベンチャー企業ではインフラの整備が整ってもむしろ会社に集まってくるという。テレワークを「会社に行かずに仕事をする」と捉えるのではなく、効率よく、しかも楽に、――楽してということではなく、時間的、身体的ゆとりを持つという意味であろうが――かつ、自己の能力を高める働き方、と捉えてみると、仕事も生活もゆとりあるものへと向かう理想的働き方ではないだろうか。

(編集部・吉成雅子)


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