第427回 地域開発研究懇談会(2008年07月)

シンポジウム「21世紀の関西を考える」
開催地:大阪市

 21世紀は「アジアの時代」である。この間、関西経済は、産業構造の転換と加速する東京一極集中に直面し、相対的な地盤沈下を経験してきた。しかし、「アジアの時代」には地理的優位性を発揮できる。グローバル化はモノ事を均一化する。それに反発しローカリズムが台頭する。歴史と文化に育まれてきた関西には、グローバリズムとローカリズムのせめぎ合いを生き抜く生来の知恵と技術がある。
 今般の講演、及びシンポジウムでは、「アジアの時代」を飛翔する関西について自由闊達に語り合った。
大西隆・関満博・高野隆嗣・杉浦幹男・瀬田史彦・大西達也・矢作弘 (敬称略)

日 時 2008年7月25日(金)13時〜17時
会 場 大阪市立大学文化交流センター
〒530-0001 大阪市北区梅田1-2-2-600 大阪駅前第二ビル6F

<プログラム> ※敬称略
13:00 開会
13:05-13:45 講演1.「関西とアジアの地政学」
大西 隆 東京大学大学院工学系研究科教授
13:45-14:25 講演2.「関西企業と台頭するアジア経済圏」
関 満博 一橋大学大学院商学研究科教授
14:35-17:00 パネルディスカッション 「大阪、神戸、京都の創造性を問う」
パネリスト
高野隆嗣 (株)地域計画建築研究所京都事務所計画部長
杉浦幹男
(株)アジアンブルームス代表取締役
瀬田史彦 大阪市立大学大学院創造都市研究科准教授
大西達也 日本政策投資銀行地域振興部課長
司 会
矢作 弘 大阪市立大学大学院創造都市研究科教授

内 容
講演1.「関西とアジアの地政学 大阪再生の期待」
  大西 隆
(東京大学大学院工学系研究科教授、財団法人日本地域開発センター理事長、『地域開発』編集長)
1.国土形成計画
 先日7月4日に国土形成計画が閣議決定した。これまでに5回つくられた全国総合開発計画を引き継ぐものであるが、法律を変えてまでつくった程の意味が込められている。例えば「分権強化」「開発主義からの脱却」があるが、今日は特に「国際化」について話をしたい。
 EUは第二次世界大戦直後に「ローマ条約」を締結したことがスタートであるが、その40年後にようやく「マーストリヒト条約」によって通貨統合が実現した。この様に国同士の繋がりをつくることは時間がかかる。日本もアジアの中で繋がりを求めようとしているが、21世紀の今、数十年をかけて実現させようと考えるのは、それほどの夢物語でもないであろう。それが国土形成計画の中で謳われていることは意義あることだ。その国際的な枠組みの中で関西や大阪の将来を考えてみたことを話そうと思う。

2.四大工業地帯から一極集中へ
 日本にはかつて「四大工業地帯(京浜、中京、阪神、北九州)」と呼ばれる地域があったが、いつからか「三大都市圏(東京、名古屋、京阪神)」という言葉が生まれた。その後、「二眼レフ(東京、大阪)」という言葉が短期間使われた後、現在は「一極集中(東京)」である。この傾向はアメリカや欧州と比較しても顕著である。これは、欧米の各都市が国内で競争し合う関係であることを示しているのに対し、日本では東京だけだということだ。大阪はもちろん、全国の政令都市がもっと頑張ってもらう必要がある。国際競争の時代においては、全国一位の都市になる必要はなく、2番手、3番手が多数ある状態が良い。

3.3大都市圏の比較
 国土形成計画を含め全6つの国土計画の中で、「東京」「大阪」「名古屋」の修験頻度を見ると、大阪は四全総以降、影が薄くなってきている。1920年以降の国勢調査の結果で三都市を比較すると、1995年以降の東京都区部でしか都心居住が進んでいないことが分かる。
 工業出荷額シェアの推移では愛知県ががんばっている。年間卸売額シェアは東京だけが伸びている。職業別シェアを見ると、東京都はホワイトカラー、サービス業がかなり多い。しかし愛知県はブルーカラーが多く、大阪府は「専門的・技術的職業」が東京に比べて少ない。
 昼間人口を比較すると、どこも横ばいあるいは減少傾向にある。しかし、夜間人口には東京都心部のみここ5年で大きく増加している。これに伴い、昼夜間人口比が急スピードで下がりつつある。
納税者一人当たり課税対象所得で比較すると、大阪が最も低く、全国平均よりも低い。最後に、各都市の外国人構成比を見る。愛知県はブラジル籍が多く、大阪府は韓国・朝鮮籍が多いことが特徴である。

4.大阪への提案
 戦後、徐々に大阪の地位が低下しつつある。回復するためには、次の2つを提案する。
1.個電時代のトップランナー・・誰もが使えるall in oneの「個電」製品開発
2.関西弁+英語を公用語に・・3世代で英語を公用語化(国際的ルールづくりへの参加を目指す)
 これらによって、ハードとソフトで開かれた大阪となろう。

講演2.「関西企業と台頭するアジア経済圏」
  関 満博
(一橋大学大学院商業学研究科教授、財団法人日本地域開発センター理事、『地域開発』編集委員)
1.中堅・中小企業の中国進出
 大連、長江デルタ(上海)、珠江デルタ(広東省)に進出した日本企業の約120社にヒアリングを行った。この内、関西企業は10社で、面白いことに上海のある長江デルタに7社が立地している。大連は日本に持ち帰るタイプの企業に好まれ、広東省は香港からの海外輸出を想定している企業に好まれる。長江デルタが好まれる理由は様々であるが、中国市場を想定している企業に特に好まれるだろう。しかし、この大阪企業7社は、私の仮説に当てはまらない。関西は上海に近いことが原因であろうか。関西の視線は上海に向かっているようだが、今日は、逆に広東省の最近の事情について話をし、関西がアジア経済圏の中でどう生きてくるかの基礎的情報の提供としたい。

2.広東の近未来像
 広東はノートパソコンと半導体を除いたIT製造業が多く、その集積規模は世界最大級である。ここ数年、この地域へのアクセスは飛躍的に良くなっており、新広州空港(関連施設を含めると山手線内側の約2倍の広さ)の整備も急ピッチで進んでいる。いずれ、東アジアの物流拠点になろう。これは世界にとって大きな変化だ。
 「フォーチュン」誌が世界企業ベスト500社のランキングを毎年発表している。毎年、アメリカが約130社、イギリスが約80社入っている。その次は、30〜40社入っている国が3〜4カ国続いて、日本はその辺にいる。しかし、今年、日本は中国に抜かれた。日本のトップはトヨタの22位だが、中国のトップは第2位である。銀行や港湾の躍進も目覚ましい。この様な中、広州が東アジアの物流拠点となっていく意味は極めて大きい。

3.広東の都市の発展状況
 上海は大阪に似て狭い範囲に都市が高層化しているが、広東は工業都市であり、都市が無限に横に広がっているような雰囲気だ。私は古い地図を持って中国へ行き、新しい地図と見比べることを習慣にしている。すると、地図が年々広域化していくことに気づく。旧市街地の周辺に、大規模な開発が短期間で実現しているため、地図に載せるべき市街地の全体がどんどん拡大しているのだ。都市が広がり連単していく様は、まるで東京のようだ。

4.広州へ進出した日本企業
 広州へは日本の自動車工場が多く移転しており、国内トップ3が顔を揃えている。2010年には生産量が100万台を超え、2015年には150万台を超えると予想されている(九州の現在の生産量は100万台)。中国の工場と言えば中古品の設備が当然だったが、最近のこれらの工場の設備は世界最先端である。そうしないと国際競争に負けてしまうのだ。
 しかし、何故、この地域に日本の自動車工場が集まっているのだろうか。それはやはり将来に輸出基地になることを視野に入れているからだ。

5.広州から先へ
 この付近に最も多く進出している企業は香港勢で、次が台湾勢、そして日系だ。最近の課題は、人件費と地価の高騰、そして電力不足であるが、台湾勢はベトナムを目指し始めた。広州からハノイは800kmの近さだ。香港勢は内陸に向かっている。300km移動しているだけだが、人件費半分、土地代五分の一、電力に余裕ありというメリットがあるのだ。日本勢はまだ明確な方向が見えてない状態だが、私の予想ではベトナムを選ぶであろう。中国とベトナムのアクセスは悪かったが、最近は徐々に改善されており、この辺の地域は一体化の方向に向かっている。
 関西もこの様な動きを把握した上で将来像を描くことが重要であろう。

○質問:大企業は中国へ、中小企業はベトナムへ行くと聞いたが。
○回答:現時点では中国の方が色々と有利である。しかしベトナムには日本に通ずるメンタリティがあり、中国の国民性に抵抗がある人には向いているだろう。ただ、いずれ人件費等は高騰するのでそれ以外のメリットは期待しにくい。

○質問:関西は、中国やベトナムとどう交流していくことで活性化できるのか。
○回答:目立たないので気づいていない人も多いが、大阪には多くのアジア系企業が入ってきている。そのような人々が大阪で楽しめるように考えていくと良いのではないか。上海は大阪によく似ているので、そう難しくはないだろう。ここ大阪は日本ではなくアジアだという考え方でいくのはどうか。

パネルディスカッション「大阪、神戸、京都の創造性を問う」
 
パネリスト: 高野隆嗣((株)地域計画建築研究所京都事務所計画部長)
杉浦幹男((株)アジアンブルームス代表取締役)
瀬田史彦(大阪市立大学大学院創造都市研究科准教授)
大西達也(日本政策投資銀行地域振興部課長、『地域開発』編集委員)
司   会: 矢作弘(大阪市立大学大学院創造都市研究科教授、当センター理事・『地域開発』編集委員)
  1.関西の経済の可能性
大西 大阪都市圏住民の『地元定着度(子供が100人生まれた場合に一定年齢に達した時点で何人がその地域にとどまっているかの試算)』を見る。京都都市圏は高校大学生世代の人が流れ込んでくるが、十分な就職口がないのでその後流出して元の人数に戻る。神戸都市圏も高校大学生世代で少し流れ込んで来て就職する頃になると出ていくが、Uターンなどで戻ってくる傾向があり、結果的に生まれた人数よりも増えている。大阪都市圏は高校大学生世代が入ってくるが、その後はズルズルと流出が続いていく。
商業床面積が供給過剰になる「大阪2011年問題」がある。大阪の商業床面積はバブル期よりずっと右肩上がりのままなのに対して、個人所得が落ちてきている。その結果、売上高も90年をピークに落ちている。また、商業就業者数も減少し始めている。
高野 京都の商店街の皆さんと話をすると、ライバルはパリや銀座だと言い、大阪は視野に入っていないが、2011年問題で言えば、京都の商業者にとっても梅田の複数の再開発は驚異である。京都は観光が盛んではあるが、京都の都心部のみ捉えるならば、大阪・神戸との都市間競争はある。
四条通では、新規の出店や建設に際して、建物の用途や外観について地元がきめ細かくチェックする活動を日常的に行なっているが、来街者が快適に歩けるよう歩道を大幅に拡幅する計画も準備中である。CO2削減と販促を目的に、買物客に鉄道料金をキャッシュバックする社会実験などにも取組んでいる。
製造業については、京都を試作産業の一大集積地化する取組が進んでいる。また、特産品開発などの取組も盛んであり、京都の中小企業家や農業者の創造性は捨てたものでないと思う。
杉浦: 日本では去年、600本の映画が撮られており、この内、劇場公開されているのは200本で、完全に供給過多になっている。よって、海外に市場を求めざるを得ない。一方、韓国は一昨年300本、昨年100本、今年は計画中30本でクランクインしているのはわずか8本だ。供給過多になったため一本当たりの収益の信頼性が下がり、資金調達をしにくくなったためである。おそらく日本も来年、同じ状態を迎えるだろう。
最近の日本の映画作りにおいても資金調達は、海外を視野に入れている。資金を出してくれる国との共同製作とし、その国の志向に合う映画づくりを行うことになる。日本の映画づくりでは、資金調達先が東京である必要はもはやなく、今後は、中国への流通が容易な香港が中心となろう。国土形成計画でアジア圏域という話が出ているが、映画産業の中では既に当たり前であり、私が制作している5本の内、4本の映画もアジア圏との共同製作映画である。
この様な中で大阪が元気になる道筋としては、映画をプロデュースできる人など、有能な人材を世界中から引っ張ってくることではないだろうか。もう一点、資金調達をしやすい環境づくりだと思う。日本の金融システムは使いづらい。
瀬田: 大阪市は東京23区に比べて面積が小さい。そのことを考慮すると、大阪もそこまで悪くはない。しかし、都市圏という括りで見ると歴然とした差が出てくる。1920年代までは東京圏に匹敵する規模であった。差がついたのは高度経済成長期である。大阪市は所得が低いという話があるが、一方でホームレスや生活保護者が多く、大阪市はこの様な人たちを追い出さずに受け入れていることも無視できないだろう。この様な問題が大阪市にあるのか、都心にあるのか、大阪圏にあるのか、よく検討する必要がある。
京都は本社機能の東京移転1つにとっても大阪とは違った様子を見せる。しかし京都が関西を引っ張っていくかと言えばそうはならないだろう。やはり大阪は関西の中心都市である。では京都のように地域ポテンシャルを高めていけば良いかともならない。やはり関西圏を引っ張っていく都市としてはグローバルな視点、巨大都市の中心としてあるべき業務機能を持たねばならない。「巨大だけど地方都市」のままでは良くない。
大阪が関西圏の中心都市として発展していくためには、関西圏全体の戦略が必要である。そのためには道州制が1つの選択肢となろう。
高野: 京都の試作産業振興は、中小企業グループが平成13年に立ち上げた京都試作ネットを契機に、18年に経済界出資でプラットホーム会社が造られるなど、オール京都で取り組んでいる。Webを使い共同受注するシステムだが、受注だけでなく各社のマーケティングとイノベーションに繋がることで、各企業の成長に結び付けている。中国が世界の工場になるのであれば、日本は世界の開発センターに、そして京都はこれをサポートする試作センターを目指すビジョンである。最近では自前のロボット開発などにも取組んでいる。
大西: 東京と比較すると大阪は調子が悪いように見えるが、地方に目を移せば、大阪はまだまだ良い方だ。大阪は100人生まれて定年退職時期には100人弱が残っているが、地方では50人程度しか残っていない。40人も珍しくない。今後の大阪はの課題は、域外への流出をどうやって減らしていくかではないか?
北九州は政令都市であるが、実は既に人口が100万人を切っている。現在は高度成長期に転入してきた団塊世代が退職期に入っており、今後の動向が注目されている。50歳以上の人を対象にした『生涯現役夢追塾』では、退職後の生き方を考えるサポート活動を行っている。この様な活動は、NPOを立ち上げたり、それを応援したり、そのような動きに投資をするなどコミュニティ活動を促進するので、財政難の自治体であっても活性化する可能性がある。また、夢追塾は人材育成の訓練にもなるので、定年延長して企業に残り後継者育成を担う人も出てくる。人づくりの面では、大阪も参考になるのではないか。
矢作: 人に住んでもらうためには、クオリティ・オブ・ライフが重要であろう。例えば大阪の環状線の景観は単純であり、居住地としても多様性がないのではないか。再開発よりも歩行空間を改善する方が経済効果は高いだろう。
瀬田: 大都市にはローカルとグローバルが必要である。グローバルは世界都市に、ローカルは創造都市に繋がる。だから大阪にも高層ビルと伝統的町並みの双方が必要だ。しかし、矢作先生が発言したように、多様性が弱いように感じる。例えば御堂筋はもっと活用のしようがある。一方では関西圏での選択と集中や機能分担を考えていくことも必要であろう。京都では建物に高さ指定を行い、業務都市になるよりも良い街にすることを選択した。
矢作: 大阪は、空間を埋めることに専念しているように思う。寧ろ引き算をした方が良い。
杉浦: 関西の可能性として、映画製作において京都にしかできないことがある。時代劇の衣装や技術の一部である。これは海外にPRすることもできる価値がある。もう一つの関西の可能性は、高等教育機関であり、アジアからの留学生にとっては魅力があることだ。そこで受入いれる体制をどう構築するかが課題となる。一つは東京にないファンドの仕組み、もう一つはクリエイターが好む様な、安くてこぢんまりして魅力的な空間である。
矢作: 関西は以前から複数の府県が連携しているのでヨーロッパ的(EU連合的)だと言われている。道州制を考えるのであれば、どういったことが必要か。
瀬田:都市間連携を考える場合、地方政府を1つにしてしまうタイプ(道州制)と、バラバラでありながら特定の課題について協働する広域連携がある。関西の場合は道州制の方が適していると考える。空港は圏内に複数あるし、京都と大阪でサミット開催を取り合うし、仲が悪いように見えるが、もし1つの地方都市で良いのだとは思わないのであれば、一致団結した方が良い。
矢作: 関空をどう思うか。
杉浦: 関空は利用料が高いので、航空会社が嫌う。だから本数が少ない。私は福岡空港を使うこともよくある。
瀬田: 関空は関西の人々の意志をきちんと反映しているのだろうか。関西の飛行場の効率の悪さについて「あれは霞ヶ関が悪いのだ」等と聞こえてくるが、それは逆に、関西が東京に頼っていることの裏返しではないか。
矢作: 関空は午前3時発の上海への貨物便について実験しているそうだ。24時間空港になれば、アジアに対して優位になるだろう。
会場: 関西の活性化を考えたとき、長期的な展望によるグランドデザインが見えにくい。今後、関西の皆で話し合って行かなくてはいけないのだろう。道州制も良いが、各府県の特徴を活かして役割分担をしていくことが重要だろう。定年世代が今後増えていくので、人材は多い。皆、勉強したいし何かやってみたい。これらの人々を拾い上げるシステムがあると良い。NPOと地方自治体が同じ目線で解決に当たれれば良い。
杉浦: 関西では、物事を計画するときにもつっこみをしあう。その後、長老が決定を行う。では、最初から長老がつくれば良いではないかということがよく言われる。
瀬田: 国土形成計画では広域地方計画をつくっているが、これも最終的な決定は国土交通大臣だ。意見がまとまらないから最初からつくらないというのではビジョンはつくれない。
矢作: 大阪の私学がもっと人を呼び込めるような環境になればいいと思う。
会場: 日本のバイオベンチャーは全国で400社ある。そのうち1割は関西に立地している。何か関西には可能性があるのではないだろうか。
会場: 4つの空港があることが悪いのではなく、機能分担の仕方が悪いのではないだろうか。関空は24時間空港で行けばいい。関西は可能性のある3都を持っている。他の地方から見れば贅沢な悩みである。
大西: 関西3都は、つっこみ合いで譲らない市民性はあると思うが、譲り合うことはないと思う。東京では関西方面を対象とした「三都物語」という旅行商品が売られている。特に女性に売れているそうだ。もし同じ様な都市の組み合わせであれば売れなかったであろう。2泊3日で全く違った都市を旅行できることに商品価値がある。また、九州や北海道は道州制には積極的であり、その推進役は広域観光になっている。関西は既に広域観光が旅行商品として成立している点に可能性を感じる。
矢作: 大阪は、持っている特徴を悪く報道されがちである。大阪が持っている特徴は朗らかなことであり、私にとっては魅力的な街だ。
高野: 道州制を考えるのであれば、市町村毎の力量の違いをどうカバーするか、考慮しなければならない。また、商いやものづくりにしても農業にしても、がんばっているプレイヤーがいる地域には無限の可能性があり、それを行財政の都合から阻害するような事態を招かぬようにすることが大前提だ。
杉浦: 九州は一丸になりやすい。九州内では佐賀が苛められ役になっているが、外の人から佐賀の悪口を言われることには我慢がならないという笑い話がある。関西はつっこみ合いをして何も決まらないというが、つっこみ合いすらできていないのが今の関西ではないか。高いプライドも原因の1つだろう。まずは話し合いを始めるべきではないか。例えば、クリエイターのネットワークづくり等、行政主導でやってみてはどうか。
瀬田: 京都にとっては道州制の意味があまりない。関西全体が地盤沈下してでも京都は生き残れるからだ。しかし、関西全体でどうかと考えたときに機能分担が必要であり、その延長で道州制が出てくる。その中で私は大阪は高層ビルを作るべきだと思う。東京では再開発地域が観光地になっているが、大阪にはそういうのがない。大阪のような都心に都市的魅力を発する場所がないのは良くない。関西には色々な機能があるが、肝心なコアがない。
大西: 大阪は所謂観光だけではなく、ビジネスで来る人が多い。そういう人たちも観光客と見なした方が良い。都市として、彼らをどうやってもてなすかを考えると良い。仕事が終わった後、飲みに行って楽しければ出張者はその都市に留まるが、つまらなければ日帰りしてしまうだろう。大阪市・京都市・神戸市は各市のものではなくて、関西のものだと考えるべきだろう。そして和歌山や奈良や滋賀まで含めて何が出来るかを考えることがグランドデザインだ。
会場: 御堂筋はかつてデートするような場所だと聞いていたが、今は車を通すだけの通りだ。
外から大阪を見ると、ステレオタイプ化していることは私も感じる。自ら客観的に見つつ、また周囲の市町村を見つつ、大阪を考えていかなけ ればならないだろう。
矢作:
御堂筋と大川がそぞろ歩きできるような環境になると良いだろう。メリハリのある予算配分によって実現していただきたい。
(文責・研究部)

『地域開発』について
   今回の地域開発研究懇談会の詳細については、『地域開発』2009年1月号への収録を予定しております。
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