「地域政策講演会」(賛助会員・地域開発研究懇談会会員対象)
第429回 地域開発研究懇談会併催(2008年09月)

「低炭素化と都市づくり」

 講 師 伊藤 滋 氏
      (財)日本地域開発センター会長、早稲田大学特命教授

 日 時 2008年9月10日(水)15時〜17時

 会 場 東海大学校友会館 朝日の間

 我が国のCO2排出量を最小化するには、地下に熱供給管を張り巡らせ排熱利用をするなど、都市計画及び都市づくりの場と機会を活用していくことが重要である。当センターの会長である伊藤滋が、低炭素社会の実現に向けた取組みの方向性について語った。

■内容
1. 温室効果ガス等の現況
排熱を有効利用するには、給湯器を地域内に張り巡らせることが必要である。しかしこの給湯用配管は公的施設になっていない。地下空間に給湯用配管を入れるには、パイプの口径を少なくするなどの課題があるが、いずれ公的施設になるであろう。

2. 都市レベルの取り組み
国内3都市でシミュレーションをした結果、業務特化型市街地、都心居住型、成熟型市街地のいずれも、個別対策だとCO2は18%強削減できるが、街区内のビルが共同で熱供給管を整備することによりCO2は50%以上削減できた。問題は、地下に熱供給管を入れるような都市エネルギー型は、工事費が高すぎてビルオーナーでは自己負担できないことである。

3. 単体レベルの取り組み
太陽光発電は約200万円の設備投資を20〜25年で回収する。一方、太陽熱給湯器にかかる設備投資は、集合住宅で1件当たり30万円、戸建は約70万。設備投資回収は、集合住宅約10年、戸建15年でできる。太陽熱供給はローテクで蓄熱できる利点もある。一方、太陽光発電の課題は蓄電池の価格できまる。太陽光発電設備が100万円、電池50万円、足して150万円まで価格が落ちれば急速に広がるだろう。

4 . 都市計画による低炭素化の試み
都市計画による低炭素化の方策として、以下の4点を提案する

都市計画による低炭素化(試案)

A. 低炭素地域制
[遵守項目]
1. エネルギー制御用地下室の設置
(蓄電池、蓄熱槽等)
2. 建築線の設定
(前面道路境界もしくは敷地境界線)
3. 戸建建築の禁止
4. 最小限敷地規模
5. 太陽光・太陽熱等自然エネルギー利用
(自給自足できる量)
B. 低炭素化都市プロジェクト
1. コミュニティ型電力ネットワーク
2. 地域冷熱供給ネットワーク
尚、エネルギーセンターと道路を横断するエネルギー供給管は、都市施設と認定する。
エネルギーセンターは、約10haの一ヶ所設置する。
注)その用地は、学校、公園、病院、駐車場等の地下部分が考えられる。
. 既存建築物について
上記の各種地域内にある小規模な既存建築物については、まず
 1.窓の二重化
 2.外壁の二重化
を求める。
この、1、2及び自然エネルギー利用を実施しない建築物については、グリーン料金を適用する。更に、固定資産税にカーボンオフセット費用を上乗せする。
D. 低炭素化公共事業
1. エネルギーセンターと道路横断エネルギー管は、都市施設であるから、公共事業で整備する。尚、エネルギーセンター内の機器の設置とエネルギー管の利用は企業が行う。(上下分離方式)
2. 市街地・エネルギー統合地域の設定に際しては、区画整理と再開発に関する補助支援を民間の企業等に行う。
3.

その財源としては、揮発油税を充当する。


 今まで提案してきた対策では限界がある。低炭素化の鍵は、蓄電池能力に尽きる。日本の技術の粋を集めた蓄電池ができれば、日本でのいろんな楽しい国づくり、地域づくりも展開していくであろう。

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