第431回 地域開発研究懇談会(2008年11月)

未成住宅団地の実態とその行方

講 師 小場瀬 令二 氏
     筑波大学大学院教授

日 時 2008年11月11日(火)15時〜17時

会 場 霞が関コモンゲート ナレッジスクエア・スタジオ

 人口減少期を迎えた我が国では、都市の計画的な再編や縮退を本格的に考えねばならない時期に来ており、中山間地域の「限界集落」や都市部の「限界団地」という単語が目につく頻度が日々高くなっている。その中間域である遠郊外地域では、造成途中で放置されたり、未利用宅地の多い住宅地、即ち「未成住宅団地」が多数発生している。この未成住宅団地については、限界集落や限界団地とは異なった視点から今後について考えることが必要ではなかろうか。居住環境のあり方について詳しい小場瀬令二氏に、茨城県内外に実在している未成住宅団地の実態とその行方が如何にあるべきかについてお話しをいただいた。

■内容

1.今後の人口動向
大都市圏であっても、人口減少は2015年までには始まる。世帯減少も始まる。遠郊外・超郊外に至っては、地下が下落しているにもかかわらず、交通利便性に劣る住宅地への需要は低下しつつある。一方、鉄道駅徒歩圏内で、整備水準の高い区画整理地区などでは、生活サービスの利便性も高いことから住み替え需要があり、多様な世代の居住地になりつつある。しかし、人口維持地域であっても高齢化進行は当面進む。

2.つくば近郊の状況
つくばエクスプレスが開通して2年目のつくば駅周辺はマンションラッシュであるが、超郊外住宅地までは影響が及んでいない。地価変動率を見ても、地価回復はつくば駅近くに限られている。開通前後の地価増減率を統計的に見ると、つくば駅から2.5kmが増減の分かれ目となっている。

3.郊外住宅地の現状
U団地(みらい平駅から3.2km、牛久駅から3km)は、非常にゆっくりと市街化して、何とか現状を維持しているものの空き屋も目立ち始めている。N団地(万博記念公園駅駅から3.5km)は1970年に開発されたが、現時点に於いて32%しか市街化されていない。雑草管理等は心がけられているようだが歩道は崩れ、管理が行き届かない部分も生じている。
M村で調査した結果、この様な郊外住宅地は、不在地主が原因となっていた。当調査で明らかになった不在地主には次の二種類である。(1)退職後の移住を考えて購入した主に東京在住者。(2)土地の値上がりを期待して購入した主に地元住民。空き地・空き屋への危機感は、「宅地としての価値の低下」「空き地の管理(主に不在地主)」「防犯面(主に居住者)」に対して現れている。

4.草刈り菜園システム
この様に空き地が多い住宅団地については「草刈り菜園システム」を提案する。これは不在地主による空き地を菜園として近隣居住者に貸し出し、近隣居住者はその代償として定額料金を支払い、草刈りを行うシステムである。行政が双方の間に入ることで成立しやすくなるであろう。

5.空き地を使った敷地倍増計画
福井市のある超郊外住宅地では、居住者が隣の空き地を買い取り、敷地を倍増させることによって日本型田園居住化を目指している。買い取った空き地は、庭や菜園、駐車場にしているようだ。特徴的なことは、この敷地倍増が成功しているのは宅地分譲用に開発された部分であり、建売分譲では起こっていないことである。宅地を購入した人たちは、建売購入者よりも土地に愛着があるのだろう。 今後、地価下落が続けば、敷地倍増の上、2000万円住宅も可能となる。超郊外の田園調布として、元気な高齢者が住む場所として整備することも1つの解決策であろう。


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