「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック2010」表彰式開催

 財団法人日本地域開発センターは、去る2月16日、「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック2010」の表彰式を開催しました。本事業は、今年度が4回目となり、受賞者をはじめ、170名を超える方々にご出席をいただきました。
開催日時: 2011年2月16日(水)14:00〜16:30
開催場所: 東海大学校友会館(東京・霞が関)
■表彰式の概要

 審査員紹介、主催者挨拶に続き、経済産業省の遠藤薫氏より次のようなご挨拶をいただきました。「この表彰制度は、先進的な住宅を表彰するものであり、住宅のエネルギー効率向上に向けた取り組みを加速的に推進する原動力になるものと考えています。さらに今年度から、集合住宅部門とリフォーム部門が新設されたことで、事業者によるエネルギー効率のいい住宅づくりがますます進められることを期待しております。また、今後の住宅産業における成長戦略のキーワードとなるのは環境対応であろうと、エコ住宅の普及、浸透を促すことが重要な課題になると考えております。政府といたしましても、住宅エコポイント制度をさらに延長、拡充し、太陽熱、節水型トイレ、高断熱浴槽については、今年の1月以降に工事を着工するものについて新たに対象とするなど、住宅省エネ化促進の後押しに努めさせていただいていることころです。」とのコメントをいただいた。
  次に、選考結果を発表し、表彰状を伊藤滋審査委員長から大賞(株式会社新昭和、株式会社松美造園建設工業)、ならびに、坂本雄三審査委員会副委員長から特別賞(&地域賞)、優秀賞(&地域賞)を、受賞者に授与した。また、昨年度より制定された、特別表彰として、優秀企業賞の発表と表彰状の授与が行われた。

−大賞受賞者への表彰状授与
株式会社 新昭和
株式会社 新昭和
株式会社 松美造園建設工業
株式会社 松美造園建設工業
続いて、坂本副委員長、ならびに、阿曽香審査委員田原祐子審査委員澤地孝男審査員より講評をいただいた。また、宮島賢一専門委員(審査委員会)、吉田直樹専門委員(審査委員会)より選考結果の概要について報告された。(お名前のリンクより各講評へジャンプします)
※講評資料は、に続くテキストリンクをクリックしてください。 (ダイアログが表示されますので、任意の場所に保存してください)
◆総評(坂本雄三副委員長)
「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック2010審査講評(主に戸建部門)」

今年度から従来の戸建部門に、新たに集合住宅部門・リフォーム(戸建)部門の2つの部門を加えました。戸建部門には、今年度は53シリーズ(件)とたくさんの応募がありましたが、これも世の中のエコ時代、環境時代が背景にあり、その勢いがどんどん強まっていることの証左だと考えます。

戸建部門の評価の視点

戸建の評価視点についてもう少し詳しくご説明します。
視点1では、外皮と設備の総合的省エネ性指標として「基準達成率」があります。応募いただいた申請書に記載された数値からその基準達成率を計算し、数値指標で省エネ性能を表します。その指標の数字を最重要視し、この評価を行っています。視点2では、設備・躯体設計等における、数値では表せない工夫、住まい方への提案(販売時、居住時)等を評価しました。
視点3では、快適性、安全性、耐久性、利便性、品質保証等とのバランス・連携について評価しました。視点4では、省エネ住宅、 オール電化住宅をたくさん売っていただく、供給実績という指標で、これも重要視したいということです。
こういう視点からではどうしても大規模な企業の方が有利で、小さいところは不利になりがちですが、ひとつは視点1の基準達成率、省エネ性能の優れたものを選択しました。大賞という意味では、視点4の供給実績、普及に対する貢献というところをピックアップして、大賞を選んでいます。ただし、昨年のものと比べてあまり進化していないものは、基準達成率が高くても、特別賞以上は与えないというルールをつくっています。

外皮と設備の総合基準の考え方と構成

昨年度から住宅事業主建築基準(トップランナー基準)の「基準達成率」を使って視点1を計算しています。この基準達成率は、数字が大きいほど省エネ性能が高いという数値ですが、「基準達成率」というのは地域によって違うので、同じ仕様のものでも地域が異なれば達成率が異なります。また、太陽光発電による省エネを含まない、いってみれば躯体と設備だけの省エネ化による省エネ達成率というところも見ています。この太陽光なしの基準達成率が高いところが評価もよくなっています。
基準達成率の計算結果と受賞ライン
Q値は、熱損失係数、断熱性能を表しているものです。特別賞は、基準達成率が200%を目処に選定し、優秀賞は150〜200%の間に達成率があるものを中心に選んでいます。
H/Y2010大賞の選考理由
新昭和のクレバリーホーム「サンブレス」は、基準達成率が大変高いわけでなく、普通に高いレベルです(204〜258%)。加えて、視点4の供給実績を重視(供給戸数900件)し、非常にたくさん省エネ住宅を販売し、省エネ住宅の普及に貢献されているところを評価しました。その背景には単価が安いということもあるかと思います。
松美造園の「ゆるりα」は、非常に基準達成率が高く、供給戸数も地方の住宅のビルダーとしては50戸と、非常に貢献されているという点が評価されました。
大賞受賞住宅の省エネ仕様
省エネの性能値を過去の大賞と比較してみると、Q値、μ値、エコキュートの効率(2009からAPFに変更)は、そんなに変わってはいません。Q値もそれほどよくなっているわけではないので、性能競争、省エネのさらなる向上というあたりが、少し伸びが落ち着いている、悪く言えば止まっているということが言えます。
まとめ
応募数が年々伸びているという喜ばしい状況でありますが、トップのグレードは、著しく伸びているということではありません。供給戸数については、皆さんが頑張っておられ、非常に電化省エネ住宅の普及が進んだこと新設した集合部門の「マンションタイプ」は、残念ながら受賞対象がなく、このあたりが課題ではないかと考えています。
また、国は2020年までに省エネルギー基準の義務化を検討し始めていますから、本審査委員会においても、今使っている「基準達成率」を評価指標としてもっとリファインする必要があるだろうと考えております。
坂本雄三副委員長講評資料は、こちら → (pdfファイル393KB)
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阿曽香審査委員講評
「オール電化住宅に対する消費者の実態」
今回は、集合住宅部門とリフォーム部門が新たに実施されましたが、集合住宅部門の分譲マンションでは該当なしとなりました。しかし、いずれも申請件数自体が少なく、良い・悪いという審査ではなく、今回の受賞に値するかどうかという観点で評価しました。
「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック2010」の特徴
今回の特徴として、太陽光発電の性能進化と普及、パッシブデザインの併用、窓などの開口部への対応を特記されている会社が多く見受けられました。昨年から続いている傾向としては、長期優良住宅への対応、長寿命化への対応に取り組む会社が多く、長寿命化に対応するために「長寿命の部材にした」「長期間の点検に取り組み始めた」というコメントがみられました。また、以前からも空気環境への対応についての記述が多くみられましたが、今回は、湿度への対応に関する取り組みを進めている会社が多かったように思われます。最後に、消費者に「見える」工夫という点が挙げられます。体験会、宿泊会に取り組み、消費者が体験できる、体感できるという制度をつくっているところが非常に多くみられます。このような消費者の方への見える化が普及するといいと思っています。
私は以前、住宅情報、住宅情報賃貸版の編集長をしており、常日頃から賃貸住宅の質があまりよくない、分譲に比べると非常に低いという点に懸念を抱いておりました。しかし、今回受賞された賃貸住宅を見て、非常に性能も高くなっており、特に供給戸数も今後伸びていくということが感じられましたので、今後に期待しています。リフォームは、古い住宅を見事にまったく違う姿に生まれ変わらせる応募のものが多く、これから非常に期待できると思いました。特に印象に残ったのは、古民家という風情のあるお宅のリフォームです。古い住宅の、性能が悪かったものを新しくする、良くするというだけではなく、古くて美しいものもリフォームという手法により後世に残していくことができるということも示され、この省エネ住宅へのリフォームに大きな期待をしています。
応募住宅の進化
2010の応募を振り返ると、普及の普を取って「普化」、もしくは、応募者の皆さんが深く掘り下げて行く「深化」ではないかと思っています。この表彰制度は、今年は4年目ですが、また来年に向かっての「進化」を期待したいと思っています。
住宅設備の採用度、建築時の重視条件
ご参考までに、住宅建築時の設備の採用度、重視条件などについてリクルートが行いました「注文住宅に関する動向調査(2010年)」を紹介します。
建築者のかたに住宅設備の採用度を聞いたものでは、「オール電化住宅」は65.5%になりました。「太陽光発電」が26.3%ですが、前年より15%アップしました。「オール電化住宅」は今年度少しさがりましたが、65〜70%の設置率で、非常に高い水準を維持しています。一方で、「太陽光発電」が大きく普及した年ではないかと思います。
また、住宅を建築した際の重視条件で、「オール電化を重視」は48%です。「断熱性・気密性を重視」が48%程度、「省エネ性能」に関しては28%、「太陽光発電」に関しては20.9%になります。「それほど重視してはいないが設置した」率が高くなっています。検討を進めているうちに、住宅メーカーの方に勧められて、オール電化、太陽光発電に結果的になったという方が多いのではないかと見ています。太陽光パネルについては、採用時に重視する点は、「発電量が多い」という答えが50%、その次が「コストが安い」ということになります。ただ、今回は「ハウスメーカー、工務店に指定されたので、自分では特に選んでいない」というご回答が37.6%ありました。こうした省エネにかかわる設備(給湯機器、窓、断熱材等)に関して、選んだ主体者は、施工会社(営業マン)の提案で選んだ方が実は非常に多いのです。施工会社にすべて任せたという方も非常に多くなっています。営業マンがいかに、消費者にその性能、良さをわかりやすく伝えられるかが大事だということでしょう。
一方で、施工会社と契約しなかった理由の一番はコストが合わなかったというものです。そして、二番目に多いのは会社、営業の対応が悪かったということです。ここでも営業マンの重要性が窺えます。
阿曽香審査委員講評資料は、こちら → (pdfファイル445KB)
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田原祐子審査委員講評
「これからの時代のオール電化住宅」
私はオール電化住宅の普及に20年前から取り組んでいますが、当時のシェアは1%未満でした。それが、女性の社会進出や高齢化社会などが追い風となって関心が高まり、高断熱・高気密住宅、熱バリアがない住宅ということにマッチするのはオール電化だということで、普及拡大をしてきたように思います。そして、環境とサスティナビリティへの配慮、躯体の性能、CSRということが出てきました。そうしたなかで2004年に財団法人日本地域開発センターが「環境と暮らしに優しい住まいとまちづくり検討委員会」(座長:伊藤滋)を設けて検討を始め、2007年に表彰制度として創設したのが「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック」です。こうしたことが、よい住宅、中身の濃い、質のよいオール電化住宅の普及拡大に非常に貢献していると思います。
「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック2010」の傾向
今回は3部門に分けて審査されましたが、戸建部門では、本格的な普及拡大を視野に入れ、応募企業の皆さまが進めていた取り組みが、本格的に実施されるステージになったのではないかと思っています。価格帯の二極化ということで、高い住宅、そしてリーズナブルな住宅というものも幅広くみられるようになりました。ただしこれは、高い・安いだけではなく、お客さまの選択肢がそれだけ増えたのではないかと思われます。昨年に続き長期優良住宅への対応、また、全戸長期優良住宅といった会社も多くみられました。消費者への分かりやすい訴求ということで、ウェブを使って情報を共有する、住まい手の皆さまへ情報発信するコミュニティのようなものをつくっている会社もありました。また、性能の向上だけではなく、自然を取り入れ、通風や採光、トータルバランスが取れているものがみられました。
太陽光発電搭載住宅の浸透ということでは、ツインソーラー、オール電化プラスというものがみられるようになりました。そしてハード、スペックでは、各社各様な工夫がされているところが見て取れました。「住まい手とのつながりを意識した活動」としては、これまで住宅業界は引き渡し後のお客さまとのつながりをあまり重視しなかったように思われますが、今は大きく変化して「ずっとフォローします、30年、60年保証します」という会社がみられました。
集合住宅部門・低層賃貸商品タイプ
入居者に対する省エネライフの喚起ということでは、太陽光発電の表示モニターなどを、外の見えるところに設置しています。また同時に、地域の方々にも、省エネ住宅を喚起するもの、オーナー様に対してワンランク上の賃貸経営提案という活動もみられました。太陽光発電のグレードも非常に高くなってきており、CASBEE総合評価のSランク相当、震度7に耐えうる住宅といったものもみられました。長期にわたる点検保証、LED照明、太陽光のモニターなど、外構も含めて省エネライフをトータルで提案していることが見て取れました。
リフォーム部門
リフォーム部門では、趣、オール電化のリノベーションといった作品がエントリーされていました。とても感心したのが、以前に建てた自社住宅をカバーしますという、本当にお客さまのためを思ったリフォームがあったことです。リフォーム前に、事前インスペクションの実施ということで、予めサーモカメラなどで調査をした上でリフォームに取り組むといったところがみられました。また、断熱の浴槽、ヒートポンプの洗濯乾燥機、LED照明、そうしたものをフルスペックでリフォームしているところもありました。
新築部門とリフォーム部門を併設されている会社も出てきていますし、光熱費の低減を確認、フォローということをリフォームでも実施していて、リフォーム後の光熱費のフォローもされていました。
これからの時代のオール電化住宅
オール電化にすると、深夜電力料金契約が使えるので、電気自動車へ充電されると非常にお安く利用できるというメリットがあります。というので賃貸住宅にも、電気自動車用の充電コンセントを設置されるものも出てきました。賃貸住宅も、安かろう、悪かろうではなく、低炭素社会の実現に向かってエコロジーな暮らしの提案をできるような賃貸住宅、そしてオーナー様への提案ということがなされています。環境共生賃貸住宅、あるいは、太陽光発電システム、電気自動車対応の賃貸住宅ということで、非常に入居率も高いようです。また、オーナー様も、オール電化住宅の経営に満足しているようです。
諸外国に比べて日本の高齢化率は急速に高まっています。1950年に5%未満でしたが、2050年には35%と、大変な勢いで進んでいます。そして、加齢による運動機能の低下によって――「見えて」からの反応が鈍いなど――高齢者の事故が多くなるということがあります。しかしながら、オール電化によって安全に料理ができるということなどは、非常に脳の活性化になるようですし、都内のシニア向けの老人ホーム、グループホームにはそういったことからもオール電化が採用されてきているようです。
最近、世の中が殺伐としてきて、家族との関わりが重要なものとして見直されています。そうしたなかで、毎日クッキングヒーターを使うようになったら、子どもとの関わりが増えた、という話が聞かれます。ちょうど、昔はいろりを囲んでみんなが集まってきて、交流が生まれた、そういった暮らしぶりでしょうか。火に代わって電気によって、新しいスタイルの家族のふれあいが実現しているのではないでしょうか。
田原祐子審査委員講評資料は、こちら → (pdfファイル764KB)
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澤地孝男審査委員講評
「省エネ基準等の動向」
地球温暖化対策、国としての検討結果の提示
副委員長の話にもありましたように、国は2020年までに省エネルギー基準の義務化をする検討を始めています。また、地球温暖化対策に関して、国としての検討をしており、2010年に3つの重要な検討結果の提示がありました。
最初は2010年3月31日に、「地球温暖化対策に係る中長期ロードマップの提案」が、環境大臣の試案という形で出されました。次に、2010年6月18日に閣議決定された経済産業省の「エネルギー基本計画」です。この中に、住宅と建築の省エネルギー政策を今後どうしていくのかということが示されています。3つ目は、2010年6月3日から今年度末まで継続するという「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」です。これは各方面の専門家が参加し、経済産業省、国土交通省、環境省の3省合同で開かれている会議です。この会議では、省エネルギー基準の今後の動向に関する非常に重要な検討と中間報告がなされております。
低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議
2020年を見据えて住宅・建築物における取り組みについて、住まいのあり方や住まい方を中心に関係者に幅広く議論をしてもらい、低炭素社会に向けた広範な取り組みと具体的施策の立案の方向性を取りまとめるということです。いずれにしても、この中に、躯体と設備を含めたハードウェアを今後どうしていくか、国の施策と関係してどうしていくのかについて、非常に重要な議論がなされています。
住宅・建築物の省エネ基準適合義務化について
住宅・建築物の省エネ基準適合義務化の対象、時期、支援策等の方向性(骨子案)について(平成22年11月12日)2010年11月12日に「方向性の骨子案」が出されまして、この会議の資料というのは公開されています。
まず、「義務化の対象について」ですが、外壁・窓等の躯体の断熱性や自然エネルギーの利用、暖房・冷房、給湯などの建築設備のエネルギー消費量を対象とすることを検討ということで、まさに皆さんがこの賞に応募されるにあたって使っていただいた、住宅のトップランナー基準の計算方法、評価方法が、このラインの延長線上の評価の物差しになるのではないかということが窺われます。
次に、基準の設定にあたっては、公平で中立な議論や手続きを経たうえで、客観性が高く、かつ、実現可能なレベルで設定するということです。これは義務化になると基準のレベルを満たしていない住宅建築物が建てられなくなるということです。
「義務化の時期」ですが、2020年までにすべての新築住宅建築物について義務化することを検討するということが明確に書かれています。順番としては、大規模な建築物から段階的に義務化を行うことになっていて、最も小規模な戸建て住宅については2020年までという後方の方になってくるということが窺われます。この現行の外皮と設備をセットにした基準の精度、範囲、をもっとよくしていく、改善していくということが非常に重要だということです。
建材機器メーカーにとりましては、この省エネ建材機器の生産体制の強化、あるいは建材機器に関わる基準の整備等が推進されるということです。窓であるとか断熱材、暖房、給湯機器、あるいは太陽熱温水器、太陽光発電、そういうものの個々の建材・機器に関わる基準の整備を推進していかなければいけないということが書かれています。
すべての新築建物の審査をして義務基準を満たしているかどうかを判断していくということになってくると、これは大変な社会的制度が必要になってきます。審査体制をきちんとしなければいけないということも書かれております。
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宮島賢一専門委員【選考概要】
「戸建部門申請商品の動向」
断熱材熱抵抗
図2の左側がIa地域の熱抵抗、右側がIb地域の熱抵抗です。1本のラインで結ばれているのが1つの申請案件です。左から屋根・天上、外壁、床・基礎と並んでいて、短 い横の点線が、それぞれの地域の次世代省エネ基準の熱抵抗です。長い点線は目安として高性能GWで90mmと200mmのラインが引いてあります。一番上にある■ラインの会社は非常に断熱性がよく、次世代省エネ基準の熱抵抗もクリアしていることが分かります。下のほうの●ラインの会社はこの熱抵抗基準で見ると次世代省エネ基準には達していないというところが見受けられます。熱抵抗の基準は、次世代省エネ基準の中でも 比較的厳しい基準です。断熱性でいいますと、この辺のラインをひとつの目標にされてはいいのではないかと思います。図3は左側がII地域、右側がIII地域です。自分の会社のラインがどこになるのか、何となくお分かりになると思いますので、参考にしていただければと思います。図4のIVb地域は、左右に半分ぐらいずつ載せています。IVb地域になると、やはり屋根・天上などは半分くらいの応募が熱抵抗基準を満たしていないという状況です。
窓熱貫流率・窓日射侵入率(図5)
左側が窓の熱貫流率、右側が窓の日射侵入率です。特に・地域は7割ぐらいの会社が熱貫流率でいうと2以下、温暖地になりますと多少3以下のものもあります。各社、付属品などをいろいろ工夫されているところが多く、熱貫流率については非常にいいものが多いというのが、採点をしていての感想です。
エアコンCOP・熱交換換気の有無(図6)
左側がエアコンのCOP、右側が熱交換換気の有無です。エアコンは、今売られているいいものになるとCOP6以上は当たり前になるのですが、今回応募された案件で見ますと、4未満もけっこうあり、ハイレベルなものが多いというわけではないようです。熱交換換気の有無は、ほぼ半々に分かれています。地域別表示とはなっていないのですが、寒冷地に行くほど採用率が高くなっているかと思います。熱交換換気は、基本的に評価を上げる方向に働きますので、採用できるところは採用していく方向で考えていただければと思います。
節湯器具の採用率(図7)
だいだい5〜6割、ものによって7割ぐらいの採用率です。これも比較的、当初に比べると採用されている割合が増えてきているのではないかと思います。給湯のエネルギーの大きい寒冷地ほどこのあたりの効果がよく出てくると思いますので、寒冷地の方はぜひ、積極的に採用していただければと思います。
太陽光発電(平均容量、設置割合で重みづけ)(図8)
太陽光発電で記入していただいたのは採用された場合の平均容量です。3〜4kw、4〜5kw、あたりに集中しています。それとは別に、本当に設置される割合(申請書記載)を掛けたものを出してあります。こちらの計算では、半分以上は1kw未満で、2kw未満までで8割ぐらいで、大きいものを入れる、あるいは、設置割合を上げると、この辺の評価が上がっていきます。
省エネへの工夫、普及への取り組み等(図9)
目についたものとしては、全棟Q値計算書を渡す、全棟気密測定、長期優良住宅の先導モデル、体験宿泊、電気料金やCO2の試算、等級4の型式の取得で、これがすぐに数値化されて採点に上がってくるものではないのですが、これぐらいが現時点で採用されている方がおられるということの参考にしていただければと思います。
申請された仕様で実物件が販売・建設されていることの証明
当初から、ジェントルマンシップでやっていますが、だんだん応募の件数が増え、少しずつですが、証拠となるような書類の提出も求めるようになってきています。今年は、年末に追加で資料を提出していただき、申請された仕様で実物件が本当に販売、建設されているかどうかというチェックを始めたというところです。次回も、実物件の図面、仕様書、写真など、標準仕様書、パンフレット、チラシ、HP等の配布物を、何らかの形で提出していただきますので、ぜひ次年度以降の応募の際にはこのあたりを頭の片隅に置いておいていただければと思います。
例えば、申請書に省エネ器具がビルトインと書いてあって、実物件で採用されていない、あるいは、仕様書では、オプションとなっている。申請書に記載された省エネ設備等が採用された物件があることを示す資料がない。そういったこともチェックしています。
どういうものをやると何ポイント上がるかということは、どの地域に建っているかとか、あるいは、全体のシステムによりますので、応募の紙だけの問題ではなく、技術的にいろいろ難しいところもあるかと思いますので、そのあたりも含めてぜひ、性能を上げていっていただければと思います。
宮島専門委員資料は、こちら → (pdfファイル256KB)
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吉田直樹専門委員【選考概要】
「戸建部門申請商品の動向」
「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック」の変遷
2007年にスタートしたこの表彰制度は、はじめは・地域、・地域だけでした。2008年には、地域をオールジャパンに拡大し、実際応募件数もそれによって増えました。2009年には、評価の方法を国の基準と整合を取るという形にして、かなり応募の裾野が広がり、今回の2010というのは、戸建てだけではなく、集合住宅、リフォームも加えて、この表彰制度そのものも変化を遂げ、応募件数も、昨年までを大幅に超えました。また、毎年応募していただいている会社も多く、継続的な努力、挑戦に対しましては心から敬意を表したいと思います。
2010におけるいくつかの特徴(課題も含めて)
今回のひとつの特徴は、寒い地域からの応募が増えてきたことです。これは、ヒートポンプの性能が寒冷地でも高い水準を発揮できるようになったということがあると思います。前回の大賞が、青森の会社であり、まさにオールジャパンで省エネ、オール電化住宅を出していただいているという点です。
2点目は、応募されている住宅は断熱性能もかなり高レベルに到達していて、系統もかなり省エネで押さえられています。それに太陽光発電が乗って、その効果は想像していた以上に大きくなっているということがあります。・地域以降になると、トップ3では、そもそものエネルギー消費量が相当減ってきていて、太陽光の効果により基準達成率の上昇効果が発生しているということがひとつの大きな特徴と言えます。
用途別で機器を見ると、暖房が特に南のほうに行くほど限りなくゼロに近く、相当断熱性能が高くなって、暖房の消費は相当押さえられる状態になっています。もちろん給湯機器の性能も相当高くなってきています。そうなると照明を含めて高効率機器設備の効果が大変利いてくるということも、もう一つの特徴であるといえます。
3点目は、昨年と比べると、価格帯の集中感が完全に二極化傾向にあります。各シリーズの供給戸数で、年間50戸以上売っている集団と50戸以下の集団に分けて価格帯を見ると、50戸以下のところはだいたい坪当たり40〜50万円というところに集中している傾向があります。低価格化の努力も進められていますし、家を選択する側からすると、非常に多様な選択肢があるということなのだろうと思います。
集合住宅・リフォーム部門
今回、集合住宅部門の低層賃貸商品タイプで特別賞と優秀賞を選考しましたが、賃貸住宅の性能は、ここまで上がったのかという水準のものになっていました。単純比較はできませんが、エコポイント的な積み上げをすると、だいたい基準達成率200%ぐらいのレベルに到達しています。審査委員会では、低層賃貸住宅がある程度性能の高い、非常に性能の高いものがシリーズとして出てくるということは、世の中に広まる戸数への影響が大きいだろうという議論がありました。
マンションは、今回受賞なしでしたが、外皮の性能で非常によい応募がありました。ただ、全体として見ると、等級3という水準のものもあり、戸建てなどに比べるともう一段階頑張っていただくことを期待したいところです。課題としては、最近のマンションでは、床暖房が標準設置という状態になっているなか、そこに高効率の暖房のシステムをどう入れ込めるのかが、現実的な課題となるのではないかと思います。
リフォーム部門は試験実施ということで、評価する側もいろいろ試行錯誤がありました。ひとつは、外皮あるいは主要設備トータルでパッケージ的に高効率なものに置き換えるという、まさに省エネの観点からの丸ごとリフォームということが実際にやられた事例。もう一つは、古民家という仕立てのなかで、丸ごと省エネということでのリフォームがなされた事例。今回この2つが特別賞となりました。こういう事例を今後蓄積していくなかで、省エネリフォームという成功事例のようなものを広く共有できることを、今後の流れとしてつくっていければと考えています。
2010から読み取れる現状、そして今後への展望
この表彰制度の経過を見ると、大きい会社/小さい会社、中央/地方ということは関係なく、技術の裾野の広がりというのは相当進んできているという印象を強く持ちます。省エネ基準の適合の義務化ということも出てきて、家にとって省エネ性能というのは、もはや基本性能化してくる時代がすぐそばに迫ってきているのではないかという気がします。
2点目は、この制度は、基本的に住宅をハードとして評価していますが、ご提案の中身を見ても、EVや、住まい方に対する提案、ハードの住宅に留まらないいろいろな動きが、実際に出てきています。また、家電以外の部分のエネルギー消費量が下ってくると、家電のところをどうするのか、家電に対する取り組みが必要になってくるのだろうと思います。
ビジネス目線で考えると、長寿命とか長期優良という物件がかなり当たり前になってきていますし、一方で、日本の人口はもうピークアウトしていて、世帯数でも2015年以降減ってくるという見通しがあります。そうすると、新築のいい家をストックとしていくことは大事ですが、ストックに対しての新しいビジネスをつくっていくということが、住宅会社に課せられていくと想定されるでしょう。それを有効に使ったビジネスへの動き、そういうことが推測されるようなご提案が、いくつかの案件ではみられるということです。
省エネ基準的適合義務化について
2050年という断面でどこまで行くのか。家、あるいは、自家用車の減り方が、一番効果が出そうだということです。また、電化ということに必然的に流れていくということがあります。電気そのものが低炭素化するということで、CO2排出量も相当減るということになりそうだということです。
この表彰制度は、毎年、変化・進化を遂げてきています、来年に向けてという意味では、今回からスタートしました集合住宅部門、リフォーム部門の充実を図っていきたいと考えています。
吉田専門委員資料は、こちら → (pdfファイル2,251KB)
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坂本副委員長の講評
阿曽審査委員
坂本副委員長の講評 阿曽審査委員の講評
阿曽委員の講評 田原委員の講評
田原審査委員の講評 澤地審査委員の講評
吉田専門委員の講評 吉田専門委員
宮島専門委員選考概要 吉田専門委員選考概要
続いて、受賞者を代表して、大賞受賞の2社からご挨拶をいただき、最後に事務局から、「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック2011」のスケジュールが発表され、閉会となった。
── 会場の様子 ──
会場の様子-1
会場の様子-2
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●お問い合わせ
下記の事務局へお願いします。 メールでのお問い合わせは、こちら→ (メールソフトが起動します)
(財)日本地域開発センター
「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック」審査委員会事務局

電話:03-3501-6856 FAX:03-3501-6855

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