2007年度事業計画
T.月刊誌『地域開発』の発行
 機関誌月刊『地域開発』は、1964年10月の創刊以来継続して発行している。2006年5月で通巻500号を超え、新たな気持ちでより質の高い情報をより広く提供するため、一層の内容充実を図り、幅広い読者層に有用な情報提供をめざす。
本年は、団塊世代の退職、オフィス大量供給、大学全入問題等により地域にも新たな動きが出てくるであろう。国土形成計画の広域地方計画の動き、地域再生計画、地域間格差、地域ブランド等に注目しつつ、今日的な課題を取り上げ、地域振興問題、国土計画論、広域行政論、地球温暖化問題、景観問題などについて、多角的な視点からの企画編集をしていく。
また、本年度は特集企画を委員以外からも提案いただく予定である。

 ●『地域開発』編集方針
@内容
地域振興に関連するテーマをもとに特集を組み、地域の自立と連携を促進する。また、広く内外在住の研究者、実務家に寄稿依頼するとともに、問題を深化するため、独自の調査研究を行う。
A編集方法 編集委員会において、上記に関する議論を行い、担当編集委員のもとで、企画を進める。
B対象読者 地域経済人、地方自治体職員、市民団体、地域問題政策担当者・研究者・実務家など。

●編集委員会の方針
  地域の自立と連携を支援する『地域開発』
●編集委員会
  委員長 (編集長) 大西 隆 (東京大学先端科学技術研究センター教授、 当センター理事長)
  委 員 関 満博 (一橋大学大学院教授、当センター理事)
  委 員 矢作 弘 (大阪市立大学大学院教授、当センター理事)
  委 員 根本祐二 (東洋大学教授)

U.「地域開発研究懇談会」の開催
 地域開発についての会員形式セミナーである「地域開発研究懇談会」は、前年度末で通算開催415回を数える。
2007年度においても、原則として年10回開催し、都市・地域に関わる一層幅広い分野からテーマや講師を選び、会員等に対し時宜を得た、有意義な情報を提供していくように努めることとする。
このため、センター評議員・理事の方々の特段のご協力を仰ぐと共に、企画・運営の一層の充実を図っていくこととする。
 また、賛助会員の方々を対象とした「地域政策講演会」も、タイムリーな現地見学を取り入れなど、工夫を凝らして実施していくこととする。

V.調 査・ 研 究
 当センターの調査・研究は、受託業務を中心に、次のように行う。
 1. 自主研究事業
・ベトナム地方都市振興のための日越地方行政官交流事業
   本事業は、昨年度下期からスタートした。
経済発展著しいベトナムにおいて、巨大化する大都市と地方の均衡のための地方振興を支援する。そのためには、ベトナムの地方行政の成長が重要である。そこで、現在ベトナムの地方行政が抱える個別の課題について、専門家の知見を踏まえつつ、類似の経験をもつ日本の地方行政が取り組んだ成果を紹介し、それをもとに行政官相互のワークショップを行う。ベトナム国内において、複数個所での交流事業を展開し、それらを連携させることによって、ベトナム国内での経験共有を図り、全体としての効果をあげる。複数個所の日越行政官のワークショップを通じて、持続的な交流へと発展させていく提案を行い、ベトナム地方都市振興へ寄与する。
 昨年度は、フートー省ベッチ市と奈良県橿原市、タイビン省と福島県いわき市にてワークショップを実施した。今年度は、ビンディン省クイニョン市、ラムドン省ダラット市で実施する。
 なお、本事業は、笹川平和財団の助成を得て行っている。
・環境と暮らしにやさしいまちづくり検討委員会
    「環境と暮らしにやさしい住まいづくり」に関する検討成果を踏まえつつ、さらに広がりを有する「まちづくり」について、関連する分野の専門家や実務家等の協力を得て総合的な検討を行い、生活者の視点に立った都心住宅および郊外住宅への新しい提案を行う。
   なお、平成16年から17年にかけて、当センターの自主研究として実施してきた本検討委員会の成果である「スマートハウジング・イン・エレクトリック」(建物躯体とエネルギー設備機器をセットとして捉え、トータルとしての住宅の省エネルギー基準を満たす住宅)認証制度およびその中から優秀な住宅を選定する「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック」表彰制度の運営を通じ、住宅の省エネルギー、CO2排出等の削減推進を支援する。

 2.受託予定調査事業業務
・地域振興アドバイザー派遣事業調査
   本事業は、地域振興に関する多様な地域の要望に対して、地域づくりの専門家を派遣し(約20地域に3名のアドバイザーを年3回派遣)、地域課題の検討を支援する事業である。昭和63年にスタートして今年で20年目を迎える。テーマは、地域の活性化、中心市街地の活性化、第3セクターの経営問題等と多岐にわたっている。最近では、地方自治体にとって懸案となっいる市町村合併後の地域づくりや施設管理活用策も主要なテーマとなっている。
・地方拠点都市整備支援事業
   平成4年に地方拠点法が施行され、そのフォローとして各拠点都市地域が策定した基本計画に基づく整備に関する支援を実施してきている。主な業務は、地方拠点法に関する施策研究会という研修会の実施と地方拠点都市地域に関する情報誌の企画・発行である。加えて、関係自治体で構成される全国協議会の支援もある。
・既成市街地再開発調査
   都市再生機構と東京電力(株)から成る「既成市街地と都市基盤整備に関する研究会」を組織し、都市機能の向上とよりよい住宅の供給に資することを目的として、土地の高度利用とエネルギーの有効活用のあり方について検討する。
 本年度は、決して良好とは言えない現在の都心部での環境の中で、原点に立ち返り「住み手にとり、真にゆたかな都市環境・居住環境とは何か」を年間活動テーマに活動を行うことをめざす。
・外苑東通り研究会
   本調査は、都市再生緊急整備地域内の未整備な主要幹線道路において、主要幹線に相応しい街路整備を進めるための沿道市街地整備のあり方や課題および方向性を検討することを目的とする。
 具体的には、緊急整備地域「環状二号線新橋周辺、赤坂・六本木地域」の市街地整備において“軸”となりうる「外苑東通り沿道地域」を対象とし調査を行う。
 平成14年度以降、快適で魅力のある街路空間の整備ならびにそれに連動する沿道市街地整備のイメージを作成し、その推進のための周辺地域を含めた「通り」づくり・まちづくりのコンセプト策定に向けた検討を行った結果を平成16年度にとりまとめ、「グランドビジョン」を作成した。平成17年度にはタウンミーティングを開催した。
 これらに基づき、地元住民の方の意見も踏まえながら「東京文化都心」、「グレートストリート」の具現化に向けての研究を深めていく。
・景観まちづくりに関する意見交換会
   電気事業は、「良好な景観の形成」に資する設備形成に積極的に寄与するよう努めたいとの意向を有しており、かつ、それを実現できる力のある企業である。
 その際に、供給義務や料金負担の公平性など公益事業である電気事業の特性を考慮し、現実的な事業運営に大きな混乱が生じないように配慮することが一方において重要な課題となっている。
 ついては、幅広い専門的な知識と高い見識を有し、社会的に大きな影響力を持つオピニオンリーダーの先生方との自由で忌憚のない意見交換を通じ、電気事業者幹部が景観問題についての理解と認識を更に深め、良好な景観づくりにいっそう貢献する設備形成を推進していくことを目的とする。
・柏・流山地域国際学術研究都市づくり推進検討調査業務
   本検討調査は、当地域における最新の都市機能整備状況や今後の計画などの動向を考慮しつつ、既往調査でまとめられたまちづくりの基本コンセプト「環境・健康・創造・交流の街」や具体的なアクションプログラムを踏まえ、国際学術研究都市づくりに向けたビジョン、並びにそのビジョンを戦略的、効率的に達成していくために必要な具体的な方策を検討する。
 18年度には本検討調査の成果を基に、学識経験者や関係者の議論・意見を踏まえて、より具体的な計画・提言を取りまとめた。本年度はシンポジウムを開催し、当地域の魅力や、今後のアクションプログラム等を各界に広く発信していく。

 3.そ の 他
以下のテーマについても、取組んでいきたい。
・ベトナム都市開発への日越ニーズ調査および事業支援
   経済発展著しいベトナムにおいて、大都市のホーチミン市やハノイ市においては、日本企業による工業団地立地だけでなく、都市開発への関心も高まっている。会員形式で、大都市での開発動向やニーズを踏まえつつ、日本企業の参入に対する支援、共同研究会やセミナーを行う。
・都市再生運動の展開方策とその推進事業化
   都市再生は、当面の経済再生のみならず、市民生活環境や都市構造の改革、新産業の創出等多様な目標を実現するために、官民、中央・地方自治体等挙げての推進が不可欠である。
 そのため、大都市だけでなく地方都市においても、その新しい意義についてのキャンペーンを展開することが求められている。当センターも、そのために有効で効率的な運動方策の提案として、地球温暖化防止を目標とした廃熱利用の都市改善技術の普及を行うとともに、その実施・運営等に参画していくこととしたい。
・沖縄県ゼロエミッション推進業務
   平成12年度に策定された「ゼロエミッション・アイランド沖縄」構想の実現策として平成16・17年度で、ゼロエミッション・モデル都市構築を推進する方策をとりまとめた。それを実現化する事業を検討したい。
・真庭市バイオマスタウン構想推進業務
   当センターで、2000年度より、林業・製材が盛んな岡山県真庭市において、木質資源の産業化を図る検討を、事業者・行政と共に行い、平成17年度に、「バイオマスタウン構想」および「バイオマス利活用計画書」をまとめた。これを実現する推進業務を検討する。
・地域開発・経済開発に関する国際的研究交流・協力
   当センターは、設立当初より国際シンポジウムや若手研究者の国際研修留学プロジェクトなどを行ってきているが、今日の国際化時代の研究交流等においてその役割は以前にも増して意義のあるものになってきている。中国や東アジア諸国との研究交流や地域開発や環境問題についての知的交流、事業連携の検討を進める。
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