美しい景観をつくるためには、多分野の専門家の参加が必要であると考えた。そして、造園、農村整備、森林、照明、彫刻の分野で極めて発言力の強い専門家に、この会に参加していただくことをお願いした。皆様はこころよく応諾してくださった。有難かった。こうして12名による、「美しい景観を創る会」は発足した。
これまでに10回に及ぶシンポジウムを東京のほかいくつかの都市で、6回に及ぶセミナーを東京で行った。醜い景観を全国から集め、世の中に問う仕事も行った。幸いなことに、新聞をはじめとするメディアは、私たちの醜い景観の指摘について、好意的な支援をしてくれた。その結果、多くの市民から賛否両方の意見・感想をいただくことができた。
この本には、そのような意識を共有している12名のうち、専門の異なる2人ずつ、6組の組合せで行ったセミナーを収録した。そして最後にこれらをまとめて日本の景観を守り再生していくための積極的かつ具体的な提案を試みている。一つひとつの対話には、その専門性が異なるが故に、美しさの本質を求める普遍的な原点が位置付けられていると確信している。本書を読んでいただいて、ぜひ“美しい日本を創る”ことの文化的な意味を、さらにはそれなしには私たちの日本は、国際社会の中で敬意のある評価は受けられないことを理解していただきたい。(美しい景観を創る会代表 伊藤滋による「はじめに」より
〔会のメンバーとその専門分野〕 |
伊藤滋(都市計画) |
石井幹子(照明) |
石井弓夫(土木) |
小倉善明(建築) |
楠本侑司(農村計画) |
新宮晋(造形) |
榛村純一(森林) |
中村英夫(国土計画) |
中村良夫(景観) |
平野侃三(造園) |
宮本忠長(建築) |
村尾成文(建築) |
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〔目次〕
アーバンデザインと修景
(都市を編集する川―広島市太田川基町護岸設計とアーバンデザイン、「向こう三軒両隣」的発想のまちづくり―小布施の生活空間づくりと修景 ほか)
土木と建築――景観を壊すもの、景観を創るもの
(景観を壊す建築、景観を壊す土木 ほか)
国土のエステ――都市から住まいまで
(百年かけて壊した日本の景観の復興、美しい国土づくり ほか)
放棄がもたらす景観破壊
(人口減少社会で開発から放棄へ―景観破壊の危機、蘇るか?いきいきとした農村景観 ほか)
景観と生活――身近な生活空間に考える鍵がある
(人の営みと景観、未来へのメッセージ ほか)
もりとまち――日本人は森を育てられるか
(日本人はもりとまちをどう創ってきたか、辺境資源の放置こそ自然破壊である ほか)
景観の品位が決める国の命運
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