宮木康夫・宮木いっぺい 共著
2007/07
 
『いちから見直す公共的事業――適切な民営化と不適切な民営化の選別
ぎょうせい(定価2,700円、2007.01)

 ニーズの多様化や、新たな社会問題の解決に向けた必要性などから公共的事業の内容や実施方法も、これに対応して変わっていくことが必要となる。
 例えば、事業主体について見ても、従来の行政(公共)だけでやる状況から民間企業へ、またNPOや社会的企業家などの新たな主体へと広がっていくことが想定される。
 「第3の道」を実践した、ブレア政権下の英国では地域に根ざした新たな主体による多様な取り組みにより地域の活性化や地域社会の改革を進めることをねらいとして、“Social Enterprise”や“Development Trust”、“COMPACT”など多くの取り組みがなされ成果をあげている。
 一方わが国においても、公共事業に関し、コスト削減や予算の効率的・効果的執行への強い要請から、事業ごとに「事業採択前のB/C評価」や事業期間中における「再評価」、そして「事業後の評価」というように投入される予算(税金)が有効に使われているかの評価作業が近年定着してきている。
 また、事業主体についてもPFIの導入や指定管理者制度の導入により、民間企業の参入が始まっており、さらに今後は、NPOなどにより実施される事業も出てくることが予想される。
 社会資本や公共的サービスをどういう主体がどういうお金を使って行うことが社会にとって最も適切かを見定めていくことが必要になっているといえよう。我孫子市で行っているように、市の全事業を対象に民間・NPOからの提案を受け、可能かつ適切なものについてはその事業を委ねるという自治体も出ている。
   本書は公共的事業の特質を、「事業利益を上げるというより公共貢献、市民・納税者の利益が目的であり、基本的には赤字資質の事業となるが、地域に必要な公共サービス供給の安定性・継続性という公共目的のために実行することとなる」「全てに優先して重視されるべきはVFMであり、税金を最大限に活用して市民に可能な限り高い質の公共サービスを低廉に供給することである」とした上で、料金収入のある事業について、収支・財務面での分析の考え方を示している。
 その中で、「低収益事業で欠損が出るケースでも公共補填は収支相償にする額でなく、事業が継続可能なレベルの補填額でよい」とし、「許容範囲内の赤字」という考え方を示している。
 こうした点は、料金収入にとらわれない公共予算による事業を行っている者にとっては目新しい部分である。
 また、公共系企業、民間株式会社及び第3セクターの機能について検討を加え、新たな第3セクター手法の提案を行っている。これらを含め、今後多様化する公共的事業を考えるにあたって参考になるものである。
(早稲田大学・小澤一郎)

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