2007/08
「ものづくり」と「食」で地域から元気を発信――「柏崎工業メッセ」と「富士宮B-1グランプリ」
市町村合併の進む中で、多くの地域は生き残りをかけて自分たちの地域になにがあるか、それをどう活用すればよいかを模索している。なかでも、地域資源を見直し、地域ブランドとして育て「地域を売り出して」いる元気なところには学ぶべきところも多い。本誌では様々な地域の課題を取り上げると同時に、こうしたがんばっている地域を応援しているが、6月初めに、2つの元気な「地域ブランド」の催しがあったので紹介したい。
■柏崎工業メッセ2007
中越沖地震で被災された皆様にお見舞い申し上げます。
本誌が印刷に回りましたころ、地震発生の報が入りました。
柏崎工業メッセの熱気、参加された皆様の活力と笑顔に、また次の工業メッセでお会いしたいと思います。
復興には課題も多く、時間を必要とすると思いますが、本稿が微力ながらも柏崎への応援となりますことを願ってやみません。
6月1日(金)、2日(土)の2日間、新潟県柏崎市の柏崎港町海浜公園で「柏崎工業メッセ2007(にいまるまるなな)」が開催された。前回は2004年10月に開催され、今回が2回目である。主催者の発表によれば、2004年の1万2,000人を越える入場者があった。柏崎の工業に携わる人たちは、これまで自分たちの仕事をPRすることが下手であったが、第1回の工業メッセに出展したことによって、自分たちの仕事に対する自信と誇りと、そしてなによりそれをアピールすることの楽しさを知ったという。そして今年の工業メッセでは出展数が前回の57社から86社(79社、1団体、6関係機関)に増えた。 また、柏崎の住民は地元の工業がすばらしいものであることを実はあまり知らない。地域産業としての工業、地域資源としての工業をもっと知ってもらおうと、実行委員会は一般の住民にも工業メッセを楽しんでもらえる企画を提供していた。
そのひとつは会場の入口前に設営された「エアトレイン」。柏崎青年工業クラブが設計と準備に1年、組み立てで1年、すべて手造りで2年がかりで作ったミニSLである。あまりに良くできていて「買ってきたのか?」と言われたとか……。もちろん乗ってみた! 動力は圧縮空気、汽笛は蒸気機関車のようだし、乗り心地もよい。直線は思ったよりスピードも出て海風を受けて心地よく楽しい。案の定、土曜日は小さな子どもをつれた人たちで長い列になっていた。
■にぎわうメッセ会場
■「削」お任せください! テック長澤
■柏崎青年工業クラブの傑作「エアトレイン」(試運転)
また、新潟産業大学、柏崎工業高校の学生・生徒が先生となり、小学生を対象とした「リモコン操縦ロボット作り」「光の万華鏡作り」「LEDライトを作ろう」などは、ものづくりの楽しさを体験してもらう工作コーナーである。子どもたちは真剣なまなざしでつくり、出来上がったロボットを「いかめしい」顔で操縦していた。ほほえましくもあり、またこれをきっかけにものづくりへの興味が膨らんでロボコンに出るようになれば楽しい。
関心が遊びのほうにばかり惹かれてしまったが、柏崎の技術の拡がりも、もちろんたくさん見ることができる。
多くを紹介できないのが残念だが、株式会社サイカワはICリード線の製造機械では世界一のシェアを誇る。経済産業省・中小企業庁の2007年度「元気なモノ作り中小企業300社」に選ばれた。綿の繊維かと思うほど細い直径16ミクロンという銀メッキ銅線を7本より合わせたもの(髪の毛は60〜80ミクロン)は、身近なものでは携帯電話に使用されている。ふたつ折タイプの蝶番に当たる部分で使われている。最近はひっくり返して液晶画面を外側に向けるタイプなどが出て、捻りに対しては従来のようなテープ状(幅のあるもの)では不向きで、このように線状のものが使用されている。
工業製品というのは筆者などには何に使われるものかわかりにくいのだが、身近なところに使われているとわかり、そこに精巧な技術があることを知って、なにやら誇らしい気分になった。地元の工業高校生、中学生も見学すると聞いたが、彼らが会場でこういったすばらしい技術にふれて夢を持ち、将来、柏崎の発展にかかわることを期待したい。
■富士宮B-1グランプリ(http://b-1gp.cande.biz/)
■グランプリは地元富士宮 ■次回開催は久留米で! ■じっと待つ人、食べる人…
疲れちゃった人も
もうひとつは「B-1グランプリ」。カーレースではない。B級ご当地グルメのレース(?)である。
6月2日(土)、3日(日)に静岡県富士宮市富士山本宮浅間大社周辺を会場として全国から21団体が地域自慢の「食」を持って集まった。こちらも今回が第2回目である。第1回は昨年2月、八戸せんべい汁研究所の企画プロデュースにより、青森県八戸市で開催され、10団体でグランプリを競った。
最近、各地で、その土地で庶民に愛されている味を通してまちの振興をしよう、そして地域の文化や歴史や生活に触れてもらおうと、「食」でまちづくりを目指す団体・グループが増えてきた。B-1グランプリはこうした活動をする人たちが手を組んで、メジャーへの挑戦をしていこうという主旨で開催されるに至った。
ご当地グルメは全国的には知名度が低くても、その土地の独自の食文化が色濃く、地域ブランドとして売り出すにはぴったりの資源である。もっとも、こういった活動が功を奏して知名度が「全国区」になってきたものも少なくない。記念すべき第1回には10団体が参加、グランプリは富士宮のやきそばであった。その初代チャンピオンが第2回の開催地となった。今回は2日間で市民の2倍にもなる25万人が会場を訪れ、ピークはどこも2時間待ちであった。誤解のないように、断っておかなければならないのは、「B級」は「A級」に劣るとか、次席という意味では決してない。庶民的で安くておいしいということである。合言葉は「B級」という、普段着で食べられる愛情のこもった表現だと思う。実際、第1回に出店した団体が中心となって、通称「愛Bリーグ」と呼ばれる「B級ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会」を設立した。B-1グランプリへの出場資格のひとつはこの愛Bリーグに加盟する団体であること。
投票は食べた箸1膳(2本)で2票、2つの料理に投票できる。そして、投票された箸の重さでグランプリが決まる。結果は……今回も、富士宮のやきそばがグランプリを獲得した。ただ残念なのは、会場は人、人、……。混雑と長い列で、全部食して投票できた人はまずいない。3、4品食べることができればよいほうであった。
■準グランプリの八戸せんべい汁。
大なべで1000人分を作るカリスマ調理人の在家真幸堂店主・在家清吾さん 。この笑顔もおいしい!次回は運営面での工夫が望まれる。そしてこれだけの人を集められるのだから、整理券でも出して、待ち時間には出店された地域の情報を得られるようなコーナーを巡れるようであればよいと思う。今回も隣接する会場で富士宮市のフードバレー構想に基づく「F-1(ふじのみや食まつり)」が併催されていたが、とにかくお目当ての料理の列から離れられない。しかし、食べるための忍耐はすごい。不満をぶつける声はほとんどなく、みんなじっと待つ。そしてやっと手にした時のうれしそうな顔! 食の魅力と食の威力を感じた祭典であった。
愛Bリーグは200団体を目標に東京大会とローマを目指す、としている。次回は、九州久留米市で2008年秋に開催予定だそうだ。次は全部食べてみたいものである。本誌では12月号で「B級グルメでまちおこし」特集を予定している。
(編集部・吉成雅子)
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