伊達美徳編修・執筆代表

2008/09

 
『初めて学ぶ都市計画』

市ヶ谷出版社(定価3,150円、2008.3)


 「初めて都市計画を学ぶために」「まちづくりに関心のある社会人のために」と帯に掲げられている。今後のまちづくりには、都市計画制度に市民が関心を抱くことが不可欠であると日頃感じており、この視点から、本書を手に取った。というのも筆者は、自治体で都市計画行政に長く携わっている。そして、業務の中で感じることのひとつに、都市計画は、住民の暮らしに直接関わる制度でありながら、住民が、都市計画を知らないということがあるからである。居住地域の用途地域を知らない人が大半と感じることも多い。もっとも、都市計画を知らなくとも、日常生活に支障が生じることは少ないが……。
  一方、都市計画法には、「国及び地方公共団体は都市計画に関する知識の普及、情報の提供に努めなければならない」という条文がある。これを実現し、市民の関心を少しでも高めようと考え、都市計画に関する講座を開催したり、インターネットでの情報提供などの取り組みも進めているが、「都市計画で定める内容は、こういう事項になっています」「この地域では、この都市計画を定めています」とかいうように、制度の説明に終わってしまい、住民の関心は、なかなか高まらないとの感も抱いている。専門的、技術的な事項を説明することに傾注し、住民の視線で、暮らしと都市計画の関係を紹介できていない面があるかもしれない。
  このような課題を感じつつ、本年4月に大学を卒業し、都市計画課に配属された職員に本書を読んでの感想を尋ねることとした。その感想は、「前半の『現況と展望編』で都市計画の意義、歴史などについて学び、後半の『制度と技術編』で用途地域をはじめとする都市計画制度の詳細を学ぶ。という構成は、都市計画制度の理解を進め、都市計画の面白さを感じることができた」というものであった。都市計画やまちづくりの大切さ、そして面白さを実感できたようである。

    また、長年、都市計画行政に携わってきた筆者にとっても、本書によって、改めて都市計画の意味を考える機会を提供してもらったところがある。
  自分たちのまちは、自分たちの手でつくり、守り、育てるという市民参加のまちづくりを進めるためには、住民や都市計画行政に携わる者、また、これからの社会を担うものが、都市計画やまちづくりの目的と、それを実現するための制度について、その関係や都市計画制度が目指すことを体系的に考えることが大切である。そして、この「初めて学ぶ都市計画」で、その入口に立つことができる。
  本書は、都市計画の入門書としての性格が強いが、暮らしと都市計画が密接に関わっていることを知ることができる内容となっており、まちづくりに関心をもつ人だけでなく、都市で暮らす多くの人に読んでもらいたい好著である。
(茨木市都市整備部次長兼都市政策課長
大塚康央)

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