地域から世の中を変えていくことが叫ばれている時代に、地域政策というテーマについて真っ向から取り組んだ本である。この本を読むことによって、地域をどう動かしていくべきかが雲が晴れたように鮮明になる。まず、序章の副題である「地域政策時代の幕開け」が本全体の主張を表わしている。この本を貫く考えを示す次の文章は、印象的である。
「経済的地域間格差は、ばらまき型財政等により短期的かつ一時的に解消されることもあり得る。しかし、これは過去の歴史からも立証されるように決して長続きしない。他方、地域の人々の意識の変革、地域独自の地域おこしのスキーム構築は短期間には形成されない。そして、ある時に地域の複合的格差が一挙に表面化していく時代が間近に来ている。これを“地域自立度格差”と言っても良いかも知れない。まさに地域政策時代の幕開けである。」そして、手を拱いているよりは、失敗を怖れずに前向きに動いていくことを論じている。
本書は、三部構成からなる。まず、第一部で「地域政策とは何か」について、地域の概念、政策の概念、地域政策の歴史の3つの面から論じた上で、第二部で「地域政策の枠組」として、住民自治、住民参画、地域コミュニティ、地方議会、地方財政、自治体政策評価のさまざまな側面から地域政策のフレームを描き出している。これを受けて、第三部では「地域政策の展開」として、都市空間や農村地域のあり方、地域の資源を活用した地域おこしの姿、地域福祉や地域のグローバル化の方向を描き出している。
本書は、創設4年目を迎えた鳥取大学地域学部地域政策学科スタッフが分担して執筆した本である。オムニ形式であるために、やや統一性が取れていない面も見受けられるが、それがかえって全体に抑揚をつけて一種のハーモニーさえ感じさせる。著者間で徹底的に議論し尽されたあとが感じられ、オムニ形式の良い面が発揮されたと見る方が適当であろう。 |
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最後の補論「地域の自立に向けて」は現在鳥取大学客員教授でもある片山善博前鳥取県知事が執筆しているが、地方自治の最前線で陣頭指揮を取ってきた経歴を感じさせる次の文章で締めくくられる。
「地方分権の目的は、決して自治体の権限を強め、あるいはその自由度を拡大することにあるのではない。その強化された機能が住民の意思によって行使され、その結果住民にとってずれのない、また住民が納める税の使い方においてむだのない自治体が形成されてこそ意味を持つものである。これが住民自治ということの意味である。ここにおいてはじめて“住民が自ら判断し、自ら決定する”という地域の自立のための必要条件が満たされることになるのである。」
地域政策のあり方について鮮烈な主張をしている一方、「地域間格差」「限界集落」等トピックをコラム形式で解説しており親切で読みやすい構成となっている。地域問題が緊要の課題である今日、ぜひ、一読をお薦めする。 |