今井晴彦・上田紘士・小浪博英・司波寛 編著

2010/6

 
『まちづくり政策実現ガイド――その鉄則とワザ』
ぎょうせい(定価2,400円 2010.02)

 車社会の中で都市が郊外に拡散し、中心市街地の空洞化、全国どこでも同じようなまちの風景の金太郎飴化、都市再生が叫ばれはじめてから久しい。
 本書は、このような状況を憂い、新都市計画法が制定された昭和40年代から、それぞれ官民で40年以上も日本の都市計画・まちづくりをリードしてきた著者グループが、首長をはじめまちづくりに関心のある人びとに向けて、今できることをまとめた政策実現ガイドと銘打っている。
  まちづくりの鉄則、実際、わざという解りやすい構成で、また著者たちの該博な知識と豊か
な見聞による内外の多数の都市の紹介も豊富で、読みやすく書かれている。容易にガイドされた気分になるが、政策実現ガイドなので事はそう単純ではない。
  「都市計画は人なり」という古い言葉は死語になった感があるが、まちづくりの鉄則であらためて「まちづくり=人」と強調している。日本の都市の生活、文化、風土に思い入れの深い著者たちが、まちづくりに関わる人たちにもそうであって欲しいと願っている。また、まちづくりにとって今さらながら行政の重要性に言及せざるをえないのは、著者たちの嘆きであろう。都市計画は、整備・開発・保全というキーワードからなる。いずれも行政が自ら行ったり、指導・誘導する政策である。これが土地利用を規定するものであり、これまでの土地利用制度やその運用の欠陥が低密度市街地を拡散し現状に至った嘆きが大きく感じられる。
  まちづくりの実際にある4つのテーマはコンパクトシティへの再生である。車によって破壊された都市から、歩いて暮らせる街なかを取り戻すための政策が集約されている。今できる政策として多岐にわたる都市を紹介しつつも、政策実現のために望むべき制度改変等の示唆も多い。これまでの数十年の政策で現状の都市を創り出したことを考えれば、取り戻すのに同様の時間がかかる

  という思いもあるようだ。都市計画・まちづくりの真の成果は長期を要するものである。まちづくりに関わる人が、今できることを進めながら、長期の課題にも取り組んでも らいたいとの示唆でもあろう。
  したがって本書は、まちづくりの実務書という体裁をとりつつも、著者たちの都市に対する ロマンにあふれ、かつ思想に揺らぎのない骨太の都市計画論・まちづくり論でもある。

 末筆ながら、著者グループと同世代の東京電機大学の西山康雄教授が、本書を一読絶賛され、 本書評を執筆されることを約束されていたが、本年3月急逝された。その意味では氏の思い入れも込められた書ともいえよう。ここにご冥福をお祈りする。
                         合掌

(株式会社アルメック技術顧問・堀田紘之)

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