東日本大震災が3月11日に起こってから早9カ月以上経つが、原発事故は未だに収束したとは言えず、復興への歩みも地域によって温度差がある。
本書は東日本大震災からの復興をテーマとして、震災後1〜3カ月の間で行われた50名弱の研究者や実践者(災害復興、まちづくりプランナー、都市工学、建築設計、観光ビジネスなど)の講演やインタビューなどをまとめたものである。
その中で、国土政策や国土構造の大転換の必要性、具体的には東京一都集中から産業だけでなくエネルギー、農業なども含めて自律分散型のエコな国土構造に変換していく必要性が述べられている。加えて、東京・名古屋・大阪は次に巨大災害エリアとなる可能性があり、東京一都集中を解体・再編して、災害が起こる前の事前復興を進めることも震災復興と同時に必要であろうという議論が興味深い。つまり、東日本に住む人たちだけでなく、われわれにもこの大震災は他人事でなく全国の地域がお互いを支え合える地域力をつける国土構造にしていく必要があるということであろう。
しかし、この本で多くを費やしているのは、このような国土政策や政府のトップダウンの方策についてではない。東北はひとつの統一イメージでは括れずいろいろな地域性や個性の集合体である。岩手、宮古、福島3県で都市地域内と漁村を合わせて約500のコミュニティが支援対象だが、それぞれがさまざまな複合的な要因を有しており、一括では復興を議論できない。したがって、政治的なトップダウンで復興のすべてを進めることは無理で、地域主導で被災者自身が復興の担い手になる必要がある。にもかかわらず、自治体自体が崩壊してしまったこと、経験者も乏しく、専門家の支援が必要である、という状況に矛盾と東北の悩みがあろう。この点に対して、多くの助言や指針、支援のあり方が本書で述べられている。
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貞観(平安時代)、江戸時代、明治、昭和と今まで4度の大地震に見舞われ、その度ごとに20%以上の人口消滅にもかかわらず、力強く復興してきたのが東北人の粘り強さの原点だと感じる。今回の大震災に対しても時間はかかるだろうが見事に復興するだろうことが本書を読んで確信を持つことができた。また、甚大な被害にもかかわらず東北の持つ文化や自然、人情の豊かさがあらためて実感され、コミュニティという言葉に都会に住むわれわれははたしてどうだろうかと考えさせられた。
東北の農業、漁業を第1次産業から加工、サービスを加えて付加価値を付けるようなブランドづくりをすべきという議論もなるほどと感じる半面、高齢化が進む漁村が今後どうなるかと心配にもなってくる。
このように、大学で都市政策を学ぶわれわれのようなこれからの都市づくりを考える人にとって、東日本大震災を身近に感じさせてくれ、この機会に自分の立場にも立って今後の社会のあり方を真剣に考えるのに大いに参考となるだろう。 |