伊藤滋・小林重敬・大西隆監修
(財)民間都市開発推進機構都市研究センター編 2004/08欧米のまちづくり・都市計画制度――サスティナブル・シティへの途 ぎょうせい(定価¥3,800-)
欧米各国の都市計画・開発制度、土地利用規制などをまとめている。それぞれの国の都市づくりの仕組みを体系的に知るのには便利である。それでいてよくある無味乾燥な、単なる制度の解説書とは違っている。本書の副題ともなっている「都市のサスティナビリティ(持続可能性)」を共通の切り口に、諸制度を整理し、その制度思想を明らかにしようとした編集手法が成功している。各章の筆者もそれぞれの思い入れを大切に論述しているので、独立した論文として読み解いてもおもしろい。
「サスティナブル」という言葉が頻繁に使われるようになって久しい。各国の制度説明に先立ってこの言葉のよって来る背景、西欧の都市計画の中では「サスティナブル」がどういう位置づけを得て使われているのか、都市計画思想のトレンドに照らしてどういう評価をされてるのか――など「サスティナブル」事情の概説がある。各国編に足を踏み入れる前の助走部にあたる。コンパクトで読みやすい。
21世紀の都市が直面する課題――新しい産業を創造する空間としての都市、歴史や文化、景観を都市づくりに活かす方法、市場と制御のシステムを都市計画にどう組み込んでいくのか、住民などNPOがまちづくりに活躍する余地は……――などについても簡潔な解説が行われている。
第2部の「欧米諸都市におけるまちづくり思想」では、EU(欧州連合)のサスティナブル都戦略や米国の成長管理政策、90年代に高揚したスマー トグロース運動に関する仔細な解説がある。それらと比較しながら人口減少時代を迎えたわが国の都市再生を取り上げ、環境共生型の都市として甦ることが政策課題となっていることを明らかにしている。
また、東京・国立の景観裁判や、宅地分割制度の弊害などに言及しながら美しいまちなみをつくるにはなにが大切かなどについても言及している。「公共と民間のパートナーシップ」の論文は、「地方主導」「小さな政府」に基づく市場優先主義に傾斜するようになった米国で、「公共と官民パートナーシップ」が叫ばれ、都市づくりで重要な役割を演じるようになった歴史的背景を追っている。疲弊したコミュニティの再生でCDCs(コミュニティ開発法人)などのNPOと地元自治体がどのような連携を組み問題解決に臨んでいるか、その実績を詳しく数字で示すと同時に、課題についても触れている。各国制度解説の「アメリカ」と合わせ読むと、米国の都市づくりの全体像をつかむのに役立つ。
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