大西隆 著
2004/09
 
逆都市化時代――人口減少期のまちづくり
学芸出版社(定価 2,310円)

  1.29ショックとか、出生者最少記録など、人口に関する話題は人口減少社会への突入に向けてまっしぐらという感じである。出生率は人為的なものには違いないが、しかし世界の経験からすると短期間にそう大きく変動するものではない。したがって、日本でもしばらくの間は出生者が死亡者を下回る人口減少の時代が続くのは避けられない。それはどんな時代になるのか、都市を舞台にこのことを考察しているのが本書である。都市の人口が増えるのが都市化であれば、都市の人口が減っていくのが逆都市化である。しかし、日本の場合には、都市から出た人々が他の都市に向かうのではなく、どの都市でも人口が減少する。もちろん町や村ではさらに一層過疎化が進むことになる。何か日本の没落のような気分がしてくるが、著者は悲観するべきことではないという。むしろ、都市での住まい方という観点から見れば、様々な改善が可能となる希望あふれる時代というのである。  それは「還流する田園、拡散する都市」と表現される。還流する田園とは、人が減った都市に緑や水辺などの自然環境が戻ってくることである。拡散する都市とは、逆に情報通信技術や分散型エネルギー供給技術が磨かれ、都市を離れて住んでも都会でと同じように情報が共有でき、仕事ができるようになることを指す。確かに、こうなれば遅れた田舎、進んだ都会というような格差は小さくなるし、都会暮らしが自然との触れ合いを犠牲にしなければならないという固定観念も過去のものとなる。東京などの現実を見ると、逆都市化時代が迫っていながら、まだ高層ビルの建設が止まらないのだが、確かに本書が指摘するように、当初はこうした高層建築を後押ししていたかのような都市再生政策も、次第に現実を直視するようになったようだ。  
コンクリートジャングルと化した大都市に潤いをもたらし、過疎化した地域に活気を甦らせることが都市再生だという本来の施策に実施されるのも遠くないかもしれない。
 本書は、逆都市化の時代には、地方分権、さらに市民主導のまちづくりが欠かせないと述べる。「知恵の実現」という概念がそれで、ただPI(パブリック・インボルブメント)で意見を述べたり、市民参加で知恵を出したりするだけではなく、市民が公益的事業を行うことによって、逆都市化時代に活気をもたらしたり、必要を充たすようになるという。確かに逆都市化時代を成熟社会ととらえれば、政府や自治体だけが公益を振りかざしてまちづくりをリードする時代ではないのだろう。

内容
序 都市再生はゆとりと環境共生から
第1章 大都市の再生
第2章 地方都市の再生
第3章 市民社会とまちづくり
第4章 情報社会と都市
第5章 交通と環境共生



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