矢作弘・瀬田史彦 編
2006/11
 
中心市街地活性化三法改正とまちづくり
学芸出版社 (本体価格3,990円、2006.9)

 今年6月に都市計画法が改正になり、大型店の立地が都市計画区域の9割以上で制限されることになった。これまでは同区域の9割で自由に立地できたとされるから大きな変化である。90年代以降都市計画が規制緩和の道を歩んできたと受け止められているので、この変化は注目に値する。しかし、テーマは中心市街地活性化、中でも中心商店街の活性化である。そう簡単ではない。評者は中小企業庁がまとめたがんばる商店街77選の選定に加わったのだが、様々な試みが功を奏して商店街や中心市街地が実際に元気になったところを選ぼうとするととても大変なので、ともかく商店街や中心市街地を活性化させようと意気込みの感じられる事業を企てたところは他の参考になるとして取り上げることにした。それでも目標の100を選ぶのは大変で、次善の切りのいい数字77に落ち着いた。
 本書は、そんな商店街や中心市街地の抱える問題を考え、また参考になる試みを知る上で格好の書である。「法改正のねらいと課題」という第1部では編者たちのものを含む6本の論文が商業問題(大型店に抗して在来商店街が売り上げや集客を伸ばせるのか?)と都市構造(都心の空洞化を伴う郊外化に歯止めがかかるのか?)に関わる諸論点に深みのある議論を展開する。特に、法改正の中心となった経済産業省と国土交通省の担当者による寄稿と研究者のそれとが組み合わされることによって、問題の深さが立体視できる。第2部(都市圏構造の課題)と第3部(まちづくり組織)では事例が取り上げられている。全部で18の豊富な事例紹介によって、各地で様々なアイデアが生まれ、実践に移されてきた経緯を俯瞰的に理解することができ、大いに参考になった。東京の事例の一つとして紹介されている自由ヶ丘でサンクスネイチャーバスと称して廃食用油を原料としたバスが複数の民間事業者の共同事業で来客サービスとして走っているのは知らなかった。
 
合併により兵庫県豊岡市の一部となった出石町では、町民の手で城を復元した経験を生かし、株式会社組織の出石まちづくり公社を結成し、共同店舗事業で収益をあげ配当を行っている。ここまでのTMO成功例があるのは実に心強い。
 現在、国では中心市街地活性化本部を設置し、基本方針を策定、市町村による活性化基本計画の作成を促している。計画ができれば、国による種々の支援が行われることになるが、評者はその際に中心商店街を構成する商店の淘汰が行われることは必須と思っている。商店への期待は、いいものを、豊富な品揃えで、安く提供してくれることに尽きる。このどこかが欠けている店は、結局長続きしない。その意味で、今回の中心市街地活性化三法の抜本改正は思い切った改革と思うが、商業に関してはこの根本問題を等閑視してはうまくいかない。そうならないためのヒントが本書にはいっぱい盛り込まれている。是非早めに手に取ることを薦めたい1冊である。
(東京大学・大西隆)

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